別れの噂
七話目です。
ちょっとあったかいです。
同様に温かい目で見守ってあげてください。
「どうしてくれるんだ……この噂」
先日の学際で一緒にダンスを踊っていた事が皆に知れ、僕達は―――
「ねえねえ、やっぱりあの2人って……」
「絶対そうよ!」
「くそー神宮寺の奴……源さんと―――なんてうらやましい!」
噂の的になっていた。
「オレのせいじゃないだろう? あれは合意の上だったんだから」
「言い方が危うい」
良はまったく気にしていないようですたすたと歩いている。
「僕が困る。ボディーガードとこんな噂がたつなんて……」
「困るのか?」
「当たり前だ。こんなのが父上に知れればお前また僕のそばを離れる羽目になるぞ」
それでもいいのか? と言う思いを込めて良を見る。
「うーん……それは困る。消して回るか」
ほっと息をつく。
いまさら別にいいとか言われたらどうしようかと思ったのだ。
「ほら、噂消して回るぞ。非常に面倒だが……」
良が前に立って手を差し出す。
その手をとって僕は歩き出した。
「香月と良が……」
「どうなさいますか? 親方様」
「……」
父上が何を考えていたのか、この時噂を消して回るのに必死だった僕達が気づくことはなかった。
「―――良?」
起きて体を持ちあげるといつもは寝室にあまり入ってこない良がベッドのそばに立っていた。
「香月? まだ夜だからゆっくりお休み。お前、稽古で寝たばっかりだってきいたから起きないかと思ってたのに」
なんだか良の顔が悲しそうに見えて眠い目をこする。
「珍しいな、どうかしたのか?」
良には緊急のために部屋の合鍵を渡してある。
だから、部屋にいること自体は不思議ではない。
では、どうしてここに来たのかが問題だ。
良の雰囲気からは緊急とは思えない。
「別に、急に香月の顔が見たくなっただけさ。寝顔でいいと思ってたら起きたな。まあ、ちょうどいいや」
「―――何を言ってるんだ?」
良のほうに手を伸ばすと、やんわりと拒絶された。
「ごめんな、これも香月の将来の為なんだ。オレが香月を嫌いになったわけじゃないんだよ」
「だから、何を―――」
「さよなら、元気で。オレのご主人様」
急激な眠気に何とか対抗しようと目をこするがどんどん瞼が落ちていく。
「さよなら」
遠のく意識の端で、扉の閉まる音がこだました。
次の話が最終回です。




