18-2:闇騎士
18-2:闇騎士
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異次元人とは出会ったことがある乱だが、異星人と出会うのは始めてだった。
奴らはシルエットだけ見れば人間とそう変わらない姿をしている。
頭もあれば、二足歩行だし、腕もちゃんと二本生えている。
逆に触覚や、尻尾、羽根が生えていたりとかもなく、影だけ見れば異星人とは気づかないだろう。
だが、彼は間違えなく異星人である。
その証拠にその顔は黒く、質感も人が持つ柔らかさと温かさをかね揃えた肌とはほど遠く、まるでレーザー地でも移植したかのように異質な光沢を持つ、冷たく固い肌をしていた。
「お前は何故、追われている?」
少女を追う異星人の数は全部で、8体。
少女と乱を中心として半円状に配置され、少しずつその包囲網を狭めてくる。
反対側に逃げようとも、乱と少女の背中にあるのは落下防止用の柵であり、その後ろは明かりが照らされていないため下まで見ることが出来ない。
「あなた、いい加減にしないと本当に巻き込まれるわよ。これはこの星で平和に暮らし、普通に恋して、幸せな家庭を築く、あなたには関係のない出来事。
早く逃げて、そして、今日のことは忘れて」
そう言って少女が乱から離れるべく、前に出る。
だが、その足が三歩も進まぬ内に少女の腕を乱が掴み、少女の動きを止める。
「本当、いい加減にして。あなたが巻き込まれる理由なんて何処にもないの。
今日たまたま、あなたはここにいた。ただそれだけの事でしょう。
それに、あなたにだって恋人っているんでしょう。なら、愛する人を泣かせる事になるから、絶対にここに残っていては駄目よ」
少女はそう言って、無理矢理乱の腕を引きはがした。
そうしている間にも異星人達は乱と少女とに迫り来る。
けして乱れることなく、まるで8人で1人であるかのような統一性だ。
「愛する人か。ああ、私には、私がこの命に代えても守って行かねばならない奴が、この次元に1人いる。お前にもいるんだろう、そんな奴が」
牢獄の中で出会った桜色の彼女が乱にはいる。
今は側にいないが、それでも守ると誓った。この次元でもっとも大切だと、ためらいなく言い切れる存在がいる。
そして、少女にも、いた。
「ええ、いるわ。この宇宙で誰よりも愛してると、恐れることなく言い切ることが出来る彼が私にはいる。
そうよ、私は彼が好き。でも、」
少女は空を仰ぎ見た。
数多の星が塵クズのように空にあった。
それらは全て恒星。
少女が生まれた星は絶対に見ていないけど、少女は確かに空から、この宇宙に舞い降りたのだ。
「でも、私は異星人。彼は地球人。愛してなどはいけなかった。
異なる星に生まれた私たちが愛し合っても、その結末はこうして、侵略するはずだった星の異星人を愛するなんて禁忌を犯した私が、同胞達に制裁される悲劇に終わる。
でもね、私は全然後悔なんかしてない。
だって、彼と過ごした今日まで、私凄く幸せだったから、だったから、だから、私、後悔なんて……してない……」
後悔なんてしていない。
そう言う少女の目には涙が溜まっていた。少女は両手を拡げ、同胞達に無抵抗であることを示す。
異星人たちは各々、銀色の警棒のような物を取り出し、その矛先を少女に向ける。
少女が己の死を覚悟した瞬間、しかし、彼女の前に闇の騎士が立ちはだかった。
乱が少女の前に立ち、
「全くもって、今日限定だが、お前一人ぐらいなら、私が守ってやるぜ」
まるで姫を守る騎士のようにそこにいたのだ。
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