M-15:魔法天使
M-15:魔法天使
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不意をついて放たれた桜色の光は、でも、攻撃魔法じゃなかった。
光が引くとそこはあまり人通りの多くないとある通りだった。
どうやら、さっきの魔法は瞬間移動系の魔法だったみたい。
ここは何処かな?
信号機に表示してある地名を見るに、お兄ちゃんの学校の近くみたいだけど。
「何をするつもりなの?」
「あなた様や誠流様に危害を加えるつもりはありませんわ。あなた様との対決はまた今度、あなた様が魔法天使に変身出来るときに。
だから、今は大人しくそこで待っていて下さいませ」
そう言って、愛理子はあたしから視線を外し明後日の方向を見た。
あたしも愛理子につられてそっちを向くと、そこではなんとお兄ちゃんが、真っ白なメイド服を着た謎の女性に襲われていたの。
「お兄ちゃん!!」
お兄ちゃんの危機にあたしは駆け出そうとするけど、そんなあたしを制したのは愛理子だった。
愛理子は左手を突き出してあたしの行く末を遮る。
「邪魔よ。早くしなちゃ、お兄ちゃんがあの白いのに殺されちゃう。
それとも、お兄ちゃんが死ぬからあんたは、それで良いって言うの!」
「いいえ。誠流様を殺すのは、わたしでなければなりません。他の方が誠流様を殺すのは、絶対にあってはならないことなのです」
愛理子の指輪がまた光る。
今度の魔法はあたしを中心に円錐を作るように展開され、さながらあたしは鳥かごに囚われた小鳥のような状況になってしまった。
「ですから、今だけは安心して、わたしを信じて下さい」
そんな事言われて、あれだけお兄ちゃんを殺す言っていた奴の言葉信じられる訳ないじゃない!!
あたしは口に出して、そう言ってやりたかった。
でも、どうしてか言えなかった。
それは多分、今の愛理子の瞳が何処か禁断の恋をしているあたしの瞳と似ていたと感じてしまったから。
「白きメイド リトル・ソング。誠流様は殺させませんわ」
愛理子はそう宣言すると、右の薬指にはめた桜色の指輪に軽く口づけをする。
「届け、わたしの想い オーバー キュア ハート」
桜色の指輪から幾条もの桜色の帯が生まれ、愛理子を優しく包み込む繭となる。
「スパーク!」
愛理子の宣言と共に桜色の繭は、蝶が孵化するかのように消え去った。
桜色の繭が消えた後に、そこに立っている彼女は、愛理子であって愛理子じゃない。
彼女は、もう一人の魔法天使。
「秘めた想いが咲き乱れる 魔法天使シリアル・アリス まもなく満開、ね」
桜色と白色が入り交じったコスチュームに身を包んだ、シリアル・アリスは、そうして、舞い降りた。
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