M-14:もう一人の
M-14:もう一人の
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あの馬鹿イリル。
本当に、空気を読めてないんだから。
こんな時こそ、あんたの出番でしょう。
桜色の指輪が光り、あたしを包み込む。
両手、両足が桜色の光で束縛されて、身動きの取れなくなったあたしはその場に倒れ込んでしまった。
「あらあら、やはり、あの杖が無ければあなたは魔法を使えないのですね。全く、なんであなたのような未熟者が、魔法天使をやっているでしょうかね」
愛理子はそう言って、桜色の指輪をあたしに向けた。
この女と話してみたけど、やっぱりあたしはこの女の事が分からない。
一体、この女は何だって言うのよ。
なんで、いきなりもってお兄ちゃんを殺すとか言い出すの。
訳わかんないわよ!
でも、もしそれが真実だとしたのなら、あたしは黙って見過ごす訳にはいかない。
「お……ちゃんが、かわ……言った……から」
愛理子に伝えるためじゃない、自身に言い聞かせるためにあたしは呟いた。
「あらあら、何か仰いましたか、哀れな妹さん」
桜色の光が強くなる。
そう、あたしは哀れなピエロだ。
絶対に叶うことなんて無い、お兄ちゃんへの愛のためにあたしの全てを賭けて生きているのだから。
でもね、多分これって強がりって言うんだろうけど………、
それでも、あたしは毎日が楽しいし、哀れなピエロな自分が嫌いじゃない!
「お兄ちゃんが、可愛いって言ってくれたから!! だから、あたしは魔法天使 パラレル・ティーカなのよ!!」
あたしの想いが弾ける。
今までイリルがいなければ使えなかった魔法の力。
それが、あたしの中から溢れて出してくる。
がむしゃらなまでの想いを制御は出来ない。
でも、あたしから溢れ出した紫色の光は、あたしを束縛していた桜色の光を裁ち切り、そのまま愛理子へと襲いかかった。
「そんな理由で、あなたは戦っているというのですか?」
愛理子は右腕を一閃。
指輪から放たれた光は紫の光を全て消し去った。
「大好きな人が喜んでくれる。それ以外に何か理由がいるわけ無いでしょう。もっとも、今まで戦ってきたつもりはないけど、これからは違う」
あたしは起きあがり、愛理子を指さした。
「あんたが、お兄ちゃんを殺すというのなら、あたしは、魔法天使パラレル・ティーカは、全力であんたから、お兄ちゃんを守ってみせるわ!」
あ~、ここでイリルがいたら、ビッシと変身して、決まるのにな。
まったく、あの杖は本当に空気が読めていないんだから。
って、あいつの忠告無視して愛理子に会っているあたしに、大きな口叩く資格はないのかもしれないけどね。
でも、やっぱり、このタイミングで変身したいわ。
「あなた様は、本当、哀れすぎますわね。でも、それ以上に幸せそうだわ」
愛理子がそう呟いた瞬間、世界が桜色の光に包まれた。
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