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M-13:第四話

M-13:第四話


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 あたしは独りで街を歩いていた。

 本当はイリルも一緒に来て欲しかったのだけど、なんか


『ごめん、定香。もしかたしたら、自分が追っている事件は、想像以上に大きな事になっているのかもしれない。しばらく、自分は留守にするけど、絶対に無茶したら、駄目だからね』


 とか言って、突然と消えてしまったから、仕方ない。

 イリルは無茶しないようにか言っていたけど、あの杖の言うことをあたしが素直に聞くはずもないし、お兄ちゃんの妹として、そして、魔法天使パラレル・ティーカとして、やっぱり自分の目で確かめないとあたしは気が済まない。

 あたしは宛もなく街を彷徨う。

 彼女については、桜愛理子という名前しかしらない。

 何処に住んでいるのか、普段は何をしているのか、あたしは何も知らない。

 だけど、あたしには乙女として、そして、魔法天使として、確信があった。

 愛理子は決してあたしを見逃したりはしないと。

「あらあら、これは奇遇ではないのでしょうね、妹さん」

 人混みの向こうから、桜 愛理子があたしに笑いかけた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 あたしと愛理子は互いに何も語らず、人の少ない公園へやって来た。

 この公園、デートスポットとして巷じゃちょっと有名だから、お兄ちゃんと何時か来たいと思っていたのに、まさかこんなお嬢様と一緒に来るなんて夢にも思わなかったよ。

「本日は、あの魔法ステッキはお持ちではないのですね」

「うん。アレもアレで、色々と忙しいみたいだからね。今日はあたし一人。もちろん、お兄ちゃんもいない。だから、真実を話しなさい」

「真実? わたしは何一つ嘘は付いておりませんわ。

 どちらかと言うと、嘘を付いているのは、あなたの方ではありません事。

 兄を恋した自分を偽っている妹さん」

 愛理子は牽制も何も成しに、いきなり直球を投げ込んできた。


「偽って……、偽ってなんなかないわよ。

 あたしは、お兄ちゃんが大好き。

 そうよ、それはあんたの言うとおり、あたしはお兄ちゃんに、実の血の繋がった兄に恋してるわ。

 でも、あたしは、この気持ちに嘘をついたことなんかないわよ!!」

「口に出して、相手に伝えられない気持ちの何処が真実だと言うのですか?

 秘めた想いなんて、秘め続けているのならそれは嘘と変わりありません。その気持ちを伝えて初めて、真実となるのです」


 あたしは愛理子を睨み付け、愛理子もあたしを睨み付けた。

「でも、あんたは、お兄ちゃんを愛してない。それは間違えない」

「いいえ、あたしは誠流様を愛していますわ。心の奥底から、愛していますとも。

 だって、そうでなくては、きっと彼を安らかに殺すことなんて出来ませんからね」

 愛理子は上品ささえ漂わせる笑みで、そう、まるで社交場で令嬢がダンスの誘いを断るかのような僅かばかりの罪悪感を含んで、そう言った。

 確かに言った。

 お兄ちゃんを殺すって。

「愛理子。あんた、一体、何を考えているの?」

 今、ここにイリルがいたら、今度こそ間違えなくあたしは、パラレル・ティーカに変身して、この女を倒していたことだろう。

 だけど、今、ここにはイリルはいない。

「愛した人の事だけですわ。誠流様に恋人はいないので、事は簡単に進む物と考えていたのですが、思わぬ所で、思わぬ人物がわたしの前に立ちふさがるのですね。

 しかも、未熟ながら、わたし同様に魔法を使う」

 愛理子はそう言うと、右の薬指にはめた桜色の指輪に軽く口づけをした。

 それが起動スイッチなのかもしれない。

 

 桜色の指輪が妖しく光始めた。


「愛する人の死に立ち会うなんて、死にたくなるほど辛いことでしょう。なら、その前にあなたから殺して差し上げましょうか?

 あなただって、大好きな兄上がこの世から消える瞬間なんて、見たく無いでしょう?」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



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