17-2:育ち、生まれ、母となる。
17-2:育ち、生まれ、母となる。
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次元を制する金色の腕輪、クロート。
それは新たな次元世界を作り出す力を秘めた禁断のMSデバイサーだ。
だが、今、この世界でそのMSデバイサーを持つのは、魔力のまの字も持たないただの少女だった。
「うん?どうした、リリ」
「鳴恵、妾がこっちに来てからずっと、その綺麗な腕輪をしておるな。それ、どうしたのだ?」
「ああ、これね。公園に落ちていたんだ。とは言っても、誰か置いていったのか、分かるし。これを持ってると、きっとまたあいつと会えると思うんだ。だから、最近はこうして肌身は出さず、持っている」
そう言って、鳴恵は金色のブレスレットをはめた右手を空に向かって突き上げた。
天井の太陽に照らされ、ブレスレットは眩く希望の光を弾く。
「って言っても、これ付け始めたの、リリが家にくる少し前から何だけどな」
その腕にはめた力の大きさを彼女はまだ知らず、無邪気に笑っている。
「何か、このブレスレットに引っかかる部分があるのか?」
「いや、あるわけが無いのだろうが、そのブレスレットは妾の知るMSデバイサーに似ていたのでな。気になったまでだ」
そして、次元の垣根を越えた数多の技術を内蔵した人形は、その顔に僅かな影を落としていた。
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「お主! クロートがどれほど危険なMSデバイサーであるか知らぬ訳では無かろう!」
炎の世界で秋生の怒声が響き渡る。
対するティーカは静かにであるが、その閉ざしていた口をついに開くのだった。
「もちろん、知っているわよ。あたしだって、そこまで無知なわけではないわ」
その言葉に罪悪感は微塵も感じられない。
その言葉に宿っているのはけして揺るがぬ信念だけだ。
「分かっているのか、下手にあの力を発動させることがあれば、あちらの世界など一瞬で消えてしまう可能性もあるのだぞ」
「分かっているわ。それでも、例え、流誠達のいる世界を消滅の危機にさらしたとしてもあたしはやらなければならないことがある」
「それは、あの久我流誠というナイトを裏切る行為ではないのか?」
秋生の一言にティーカの言葉が詰まる。
が、しかし、ティーカは怯まなかった。
「そうね。きっとあたしがあの世界に行った真の意味を知れば、流誠はもうあたしを守るなんて言わないでしょう。
でもね、あんたに分からないわよ、大事で好きかもしれない人を裏切ってでも、しなければならないことがあるの」
「小職には分からないな」
「でしょうね、あんた達、次元監視者は次元の安定さえ守れてればそれで良いのだからね」
そう言う、ティーカの声には皮肉以上の憎しみが込められていた。
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次元の狭間でクレデターは生まれる。
自らが存在する次元を持たぬ彼らは、他の次元に自らの居場所を求め、次元の侵略を開始する。
次元の狭間は闇で包まれている。
クレデターはその闇の中で生まれる。
その闇の中で育つ。
その闇こそがクレデターの母である。
母であった。
今、次元の狭間で変革が進もうとしていた。
静かに、誰にも気づかれることなく、闇の中に別の色が生まれ、育ち、クレデターの新たな母となる。
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闇の中に生まれた新たな色、それは淡い桜色をしていた。
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