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17-1:運命を作り、創る。

17-1:運命を作り、創る。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ティーカ・フィルポーズ。何故、何も言わない。お主は、一体何を隠しているんだ?」


 炎に包まれた世界。

 次元監視者である来名秋生の世界で、紫の妖精と朱の天使が互いに向かい合う形で座っていた。

 と言っても、ティーカは両腕を背中で縛られ、その紫色の羽根にも鎖が巻かれているのだが。


「何時までも黙っているようなら、こちらとしてもかなり手荒な手段を使うしかなくなる。

 お主は次元を超え、他次元世界の次元固定率に不安定要素を持ち込んだ。

 正直、お主が後一年もあの世界にいたのなら、あの世界には取り返しのつかない異常が発生したいたことだろう。

 それは罪だ。

 だが、これ以上業を積み重ねる必要はない。

 あの世界で何をしたのか? 次元監視者である小職が知りたいのは、この一点のみだ。教えてはくれぬか?」

 

 ポケットからコイン型MSデバイサーを取り出し、秋生は親指でコインを弾く。

 このMSデバイサーから火球を生み出し、ティーカに火傷を負わせることなど雑作もない。

 人間が歩くという行為をほぼ無意識で行うぐらいに自然に、秋生は魔法を使える。

 殺すつもりはない。

 しかし、秋生は、この次元犯罪者の真実を知らねばならない。

 半端な拷問では、彼女は何も語ろうとはしなかったが。


「ティーカ・フィルポーズ。どうしても、語るつもりはないのだな」


 それは最後通告だったが、しかし、ティーカは逆に秋生を挑発するかのように唇をつり上げた。


「そうか。ならば、仕方あるまい。時間がかかればかかるほど、危険になるのはあの次元なのだからな」


 一瞬、ティーカの顔が歪んだ。


 それは自らが罪を犯していると自覚している顔だった。

 この女はそこまでして、世界を一つまるごと危険にさらして何をしようとしていたのだ?


 その秋生の問いへの答えは、ティーカではなく別の所からもたらされた。

「来名。やばすぎ、その妖精、とんでもない物、あっちの世界にもちこんでったわ。

 どうりで、次元固定率があんなにぶれる訳よね。

 妖精一匹と、たかが三つのMSデバイサーで、あんな不協曲線描けるわけないのよね。来名の言うとおりだったわ。

 やっぱ、来名、あんたは良い次元監視者よ。うんうん」

 突然と炎が来名とティーカの間に割り込み、モニターのように正方形を作るとそこに紺色の髪をツインテールにしてた女性が映し出された。


 彼女は、秋生同様に次元監視者の一員であり、名をロド・リンという。


 次元監視者になった時期が近いため何かと相談に乗ったり、乗ってもらったりしているのだが、彼女は他人を考えずに話を自己完結する癖があり、少々困りものだったりする。


「リン殿、落ち着いてくれ。とても大事な所が抜けている。

 リン殿は、ティーカ・フィルポーズがあの世界に持ち込んだ物が分かったのだな。それに三つと言った。

 小職が回収したMSデバイサーは、二つ。

 つまりは、小職にミスがあったと言うことなのか?」

「そうとも言えるのかな。でもでも、来名は全然悪くないよ。

 あんなもん、逆にぶっとびすぎてるし、一つじゃMSデバイサーとしては未完成品だし気づく訳ないって。

 まあ、だからといって見過ごすわけにはぜ~ったいに行かない物だし。

 その妖精の監視はこっちで引き受けるから、来名はもう一度、あの世界に行っておいでよ」


 リンはまたしても自己完結して、腕組みをして一人勝手にうんうんと頷いていたりする。


「リン殿、何だというのだ、その三つ目のMSデバイサーというのは?」

「え? ああ、それはね、来名も名前は聞いたことあるでしょう。

 S級次元遺失物、次元を制する最悪のMSデバイサー、フェイト。

 その妖精が持ち出したのは、その一つ、次元を生み出す黄金の腕輪、クロートよ」

 

 そのMSデバイサーの名前を聞いた瞬間、来名はリンの存在など忘れて、その先にいるティーカを睨み付けた。


 対するティーカは、してやったりとばかりに口を大きく開き、「シャアアア」と秋生を挑発するのだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 次元を制する金色の腕輪、クロート。

 それは新たな次元世界を作り出す力を秘めた禁断のMSデバイサーだ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


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