17-1:運命を作り、創る。
17-1:運命を作り、創る。
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「ティーカ・フィルポーズ。何故、何も言わない。お主は、一体何を隠しているんだ?」
炎に包まれた世界。
次元監視者である来名秋生の世界で、紫の妖精と朱の天使が互いに向かい合う形で座っていた。
と言っても、ティーカは両腕を背中で縛られ、その紫色の羽根にも鎖が巻かれているのだが。
「何時までも黙っているようなら、こちらとしてもかなり手荒な手段を使うしかなくなる。
お主は次元を超え、他次元世界の次元固定率に不安定要素を持ち込んだ。
正直、お主が後一年もあの世界にいたのなら、あの世界には取り返しのつかない異常が発生したいたことだろう。
それは罪だ。
だが、これ以上業を積み重ねる必要はない。
あの世界で何をしたのか? 次元監視者である小職が知りたいのは、この一点のみだ。教えてはくれぬか?」
ポケットからコイン型MSデバイサーを取り出し、秋生は親指でコインを弾く。
このMSデバイサーから火球を生み出し、ティーカに火傷を負わせることなど雑作もない。
人間が歩くという行為をほぼ無意識で行うぐらいに自然に、秋生は魔法を使える。
殺すつもりはない。
しかし、秋生は、この次元犯罪者の真実を知らねばならない。
半端な拷問では、彼女は何も語ろうとはしなかったが。
「ティーカ・フィルポーズ。どうしても、語るつもりはないのだな」
それは最後通告だったが、しかし、ティーカは逆に秋生を挑発するかのように唇をつり上げた。
「そうか。ならば、仕方あるまい。時間がかかればかかるほど、危険になるのはあの次元なのだからな」
一瞬、ティーカの顔が歪んだ。
それは自らが罪を犯していると自覚している顔だった。
この女はそこまでして、世界を一つまるごと危険にさらして何をしようとしていたのだ?
その秋生の問いへの答えは、ティーカではなく別の所からもたらされた。
「来名。やばすぎ、その妖精、とんでもない物、あっちの世界にもちこんでったわ。
どうりで、次元固定率があんなにぶれる訳よね。
妖精一匹と、たかが三つのMSデバイサーで、あんな不協曲線描けるわけないのよね。来名の言うとおりだったわ。
やっぱ、来名、あんたは良い次元監視者よ。うんうん」
突然と炎が来名とティーカの間に割り込み、モニターのように正方形を作るとそこに紺色の髪をツインテールにしてた女性が映し出された。
彼女は、秋生同様に次元監視者の一員であり、名をロド・リンという。
次元監視者になった時期が近いため何かと相談に乗ったり、乗ってもらったりしているのだが、彼女は他人を考えずに話を自己完結する癖があり、少々困りものだったりする。
「リン殿、落ち着いてくれ。とても大事な所が抜けている。
リン殿は、ティーカ・フィルポーズがあの世界に持ち込んだ物が分かったのだな。それに三つと言った。
小職が回収したMSデバイサーは、二つ。
つまりは、小職にミスがあったと言うことなのか?」
「そうとも言えるのかな。でもでも、来名は全然悪くないよ。
あんなもん、逆にぶっとびすぎてるし、一つじゃMSデバイサーとしては未完成品だし気づく訳ないって。
まあ、だからといって見過ごすわけにはぜ~ったいに行かない物だし。
その妖精の監視はこっちで引き受けるから、来名はもう一度、あの世界に行っておいでよ」
リンはまたしても自己完結して、腕組みをして一人勝手にうんうんと頷いていたりする。
「リン殿、何だというのだ、その三つ目のMSデバイサーというのは?」
「え? ああ、それはね、来名も名前は聞いたことあるでしょう。
S級次元遺失物、次元を制する最悪のMSデバイサー、フェイト。
その妖精が持ち出したのは、その一つ、次元を生み出す黄金の腕輪、クロートよ」
そのMSデバイサーの名前を聞いた瞬間、来名はリンの存在など忘れて、その先にいるティーカを睨み付けた。
対するティーカは、してやったりとばかりに口を大きく開き、「シャアアア」と秋生を挑発するのだった。
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次元を制する金色の腕輪、クロート。
それは新たな次元世界を作り出す力を秘めた禁断のMSデバイサーだ。
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