15-2:セカンド・ジェネレーション
15-2:セカンド・ジェネレーション
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
僕は一体、何をしているのだろうか?
闇法師の気配を持つ少女と、全く魔力の気配を感じさせない女性と一緒に秋祭りを回りながら玉露は自分に問いかけた。
いくら、闇法師を監視するのが目的とは言え、月島の人間が、闇法師と一緒に祭りを歩いていたなどと知られれば一族どもの笑い種だ。
本当に、これは一体何の悪い冗談なのだろうか?
リリシアと言うらしいこの闇法師を隙あれば、刹那で斬り殺してやろうと窺っているが、先程からこの無口な人形のごとき少女は片時も警戒を解かず、隙など微塵も感じさせない。
「ほら~、リリ、何つまらなそうな顔して居るんだよ。ほら、これチョコバナナ。美味しいぞ」
リリシアと玉露が生死を賭けた、見えざるさぐり合いをしているというのに、金のブレスレットをはめた鳴恵はそんな気配など全く無視してリリシアに屋台で買ったチョコバナナを差し出す。
リリシアは少し驚いた顔をして、次に何故か怒ったように目尻をあげたが、結局はチョコバナナを受け取り、その小さな口でかぶりついた。
「はい、これはお前の分。ほらほら、折角の祭りなんだぜ。そんな獲物を狙うような目していたら、ちっとも楽しめないぜ。それとも、他に行ってみたい場所とかあるのか?」
リリシアにチョコバナナを渡すと看破いれず、彼女は玉露にもチョコバナナを差し出してきた。
予想外の出来事に、玉露は目を白黒させ、この差し出されたチョコバナナを受け取るべきか、拒否すべきか即座に答えを出せずにいた。
「あれ、もしかしてチョコとか甘いの嫌いだった?」
「いいや、そんな事はない」
「そっか。それは良かった。じゃ、ほら、オレのおごりなんだから、受け取っておけよ。これ、三丁目の遠井さん作で美味しいんだぜ。オレなんて、毎年絶対に食べてるし」
そう言って玉露に無理矢理、チョコバナナを手渡すと鳴恵は自分用に買ってきたチョコバナナにかぶりついた。
彼女の言葉に嘘はないらしい、本当に美味しそうにチョコバナナを食べている。
ちらりと横を見ると、リリシアも無口ながらほんの少し頬を緩めてチョコバナナを少しずつ食べている。
そんな二人を見ていると、無性にお腹が減ってきた錯覚に見舞われる。
闇法師と同じ物を同じ場所で食べるなんて癪だけど、これはただの人間である鳴恵と一緒に食べるから良いのだと自分に言い聞かせて、玉露はチョコバナナを口に含んだ。
本当、鳴恵の言葉に嘘はなかった。
「美味しい」
思わず本音の感想が口から零れてしまった。
「そ~だろう。祭りはそうして美味しいもの食べて、屋台で遊んで、そして、友達と和気藹々と話し尽くす場所なんだ。
ってことで、コレ食べ終わったら、次は輪投げでもしに行こうぜ。リリシアなんて、その背格好から絶対に輪投げが似合うだろうし、お前って運動神経良さそうだから、きっと豪華賞品ゲットできるぜ」
祭りの夜は長い。
彼女たちの夜はまだ始まったばかり、その手に紫の妖精から託された金の腕輪を輝かせ鳴恵は、リリシアと玉露の手を引き歩き出した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




