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14-2:見

14-2:見


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 全くこの男はあの頃と何も変わってないんだから。

 二年ぶりに再会したかつての恋人は、あの頃と同じように一歩を踏み出せずに立ちつくしていた。

 もう、共に別れ別れの道を歩む者同士。

 もし、姿を見つけてもその姿を一目確認するだけで話しかけようなんて考えていなかった。

 それなのに、未だに自分を捨てきれていなかったこの男を見ていると、何かを言ってやらずにはいられなかった。

「それで、あんた、藍と別れて二年が経つけど、今は何を悩んでいるわけ? まさか、まだ藍を守れなかったこと悔やんでいる訳じゃないでしょう?」

 藍と流誠は全く違う世界に住む住民だ。

 

 流誠が住むのはこの空の下。

 藍が住むのは深い地の底。


 たったそれだけの違いで、元は同じホモサピエンスだと言うのに、二人の愛は、引き裂かれてしまったのだ。

「半分はそうかもしれない。ボクは未だに、君の事を忘れていないから」

「半分か………。じゃあ、残りの半分は何なのよ?」

 藍達の部族が一体いつ頃から、太陽の下を捨て、遥か洞窟の奥外、地下世界で暮らし始めたのかは定かではないし、何故そうしなければならなかったのかさえ藍は知らない。

 ただ、分かっているのは、地下世界の住民は皆、地上の人々を見下しており、自分らは選ばれた民であると信じている。

 だから、地上調査の仕事で地下世界を出て、地上で暮らし、流誠と出会い、そして恋に落ちた藍を断罪する者は多かった。

 選ばれた地底人と愚かな地上人が愛し合うことなど、彼らにとって見れば、人が豚と愛し合うに等しい行為に見えたのだろう。

『ボクは、地下世界の住民から、絶対に君を守り抜く』

 流誠は愛の告白と共にそう宣言し、本当、まるで騎士のように藍を地下世界の住民から守ってくれた。

「ティーカ。そう名乗った妖精とボクは出会った。そして、君にしたように、ボクはまた、誓ったんだ。

 ボクが守ると。

 でも、やっぱり駄目だった。藍、君の時と同じだ。ボクはまたしても守れなかった、守りきれなかった、誓いを果たせなかった」

 でも、流誠の敵は大きすぎた。

 民族意識で固まった社会を相手に、流誠は良く戦ってくれたと思うが、豚がどんなに叫こうが人がその意味を考えないように、地下世界の住民も流誠を相手にしなかった。

 それどころか、うるさい豚が気に食わず、殺そうとまでしてきた。

「へえ~~」

 そんな経緯があったと言うのに、流誠はまた誰かを守り抜こうとしたらしい。

 それも妖精だなんて、また地底人である自分よりもぶっ飛んだ存在をだ。

 藍は自分が何故、この男に恋したのかを思い出し、そして、もう一度彼に恋しそうになった。

 でも、それはもう叶わぬ恋。

 あの日、別れを決めた時にこの恋は終わっているのだ。

 それに、どうやらこの男には、もう次がいるらしい。

 本当、

「心配して、損したわ」

 そう言って、藍は大きなため息をついた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



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