M-10:ライバル登場?
M-10:ライバル登場?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日。
「さあ、定香、現場検証だよ」
やっと風邪を完治したあたしに、イリルは言ってきた。
「嫌だ」
あたしは、迷わず即答。
「どうして、現場検証は今度の戦いを有利に進めていくために、大切だよ。それに、昨日のこともある。
もしかしたら、この世界は自分にも予想外の展開に進んでいるのかもしれない。何であれ、情報は大切なんだよ、定香」
イリルはなんか熱い口調で語りかけてくるけど、あたしは半分聞き流しながしならがら、今日着ていく服を選んでいる。
う~ん、どれも今ひとつなんだよね~~。
「イリル、あなたなんか勘違いしていない?
あたしは別にこの世界を守りたいから、パラレル・ティーカになった訳じゃないんだよ。
あたしはただ、お兄ちゃんがパラレル・ティーカは可愛いって言ってくれたから、変身しているだけなんだよ」
これも、なんか違うな。
あ~、もういっそのこと、パラレル・ティーカの姿で行っちゃおうか?
でも、アレで街角歩くと、流石に目立ち過ぎちゃうな。
あ、そうだ、言ってなかったけど、今日はあたしお兄ちゃんとデートなの。
本当は、あたしの完治祝いにお兄ちゃんが食事に連れて行ってくるだけなんだけど、もちろんあたしはそれだけで終わらせるつもりなんて毛頭無い。
一緒に買い物したり、映画見たり、定番とかステレオ・タイプと言われようともあたしは今日、お兄ちゃんとデートするんだ。
「だから、今日のあたしは、本気なの。調べるならイリルだけでも問題ないでしょう。
うん、そっちの方が邪魔者がいないし、イリル行ってらっしゃい~~」
「あ~~、本人を前にして、よくもまあ、素直に邪魔者って言い切れますね」
「だって、本当のことなんだもん。
ほらほら、あたし、着替えるから、早く、現場検証行ってらっしゃい。もちろん、今日は帰ってこなくていいからね。
ってか、帰ってこないで」
そう言って、あたしはまだ何か騒いでいるイリルを窓から放り捨て、本気モードの服に着替え始めるの。
う~~~~、でも、やっぱり、どれ着れば良いのか悩んじゃうよ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
結局、あれから一時間大いに悩んだあたしは、白を基調としてピンポイントで紫を盛り込んだ服装に決めた。
決め手は、やっぱり、この服装がパラレル・ティーカの姿に似ていた事かな。
この服装を見たお兄ちゃんもまんざらでもないって顔してくれて、あたしは心の中で思わずガッツポーズ。
それから、二人で駅まで歩いて、電車に乗って、近くの繁華街へ。
「さあ、お兄ちゃんのためにコースはもう考えているの。コーディネートはあたしに任せてね、お兄ちゃん」
そう言って、あたしはお兄ちゃんと手を握り、今日という幸せな一日を楽しむべく、前に進み出した。
でも、幸せな時間はあたしの予想もしなかったライバルの登場で突然の終わりを告げた。
彼女は、薄桜色のワンピースに身を包んで、見るからに深淵の窓が似合いそうな清らかな雰囲気を持っていた。
あたしとお兄ちゃんが一休みとして、コーヒー店に入ったとき、彼女はいきなり現れて、そして、あたしが言えないその一言を、いきなり繰り出したの。
「久我誠流さん。一目見たときから、好きです。だから、わたしとお付き合いしてください」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




