表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/246

13-4:オレはこんなじゃ諦めないぜ

13-4:オレはこんなじゃ諦めないぜ


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「今日のママ、格好良かったな。ああ、やっぱりママはオレの永遠の憧れだぜ」

「うん。小夜子は優しくて、厳しくて、強い。妾はそんな小夜子が大好きだ」

 夜、自分の部屋にて、鳴恵とリリシアは盛り上がっていた。

 話の内容は、今宵の食事の時に見せた小夜子の一面についてだった。

 鳴恵は小夜子に小さな頃より憧れを抱いており、リリシアの小夜子の優しさの下に隠れた強さが大好きだった。

 二人が共に心から尊敬し、敬愛している小夜子の話題が弾まないはずがない。

 もうかれこれ、一時間以上こうして小夜子議題で盛り上がっている。

 小夜子が望んだ二人の絆は確かに、少しずつ育まれている。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 暗闇で、魔が蠢いた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「うん? どうした、リリ?」

 突如、ルームメイトの雰囲気が変わり、鳴恵は首を捻った。

 が、彼女の本職を考えれば、その答えはすぐに導き出せる。

「奴らが、出た。鳴恵、妾は出てくる。小夜子達に説明しておけ」

 そう言って、部屋を飛び出そうとするリリシアだったが、その手を鳴恵に捕まえ、動きを封じられてしまう。

「離さぬか、妾は時間がないのだ」

「分かってる。だから、オレも一緒に行く」

「何を言っておる? 妾は遊びに行くではない。一歩間違えば死が待つ戦場へ行くのだ。力のない鳴恵が来たところで、足手まといだ。

 それに、戦っている妾は妾であって、妾でない。戦場にいるのは、ただの人形だ」

 そう言い残し、掴む鳴恵の手をふりほどいて、青人形―リリシア・イオ・リオン―は家を飛び出した。

 鳴恵も後を追いかけるが、玄関を飛び出した彼女が見たのは、召還した青の獅子に跨り、鳴恵を置いて戦場へ向かうリリシアの背中だけだった。

「リリシア!」

 と叫んだ声にも青人形は振り返らない。

 その小さな背中はすぐに見えなくなった。

「完全に無視して、置いていくとはね。だが、オレはこんなんじゃ、諦めないぜ」

 そう呟いた鳴恵は、一度部屋に引き返し、部活で使っている弓道道具とバイクのキーを手に取り、外へ、戦場へ向かう。

 魔法なんてない。

 力なんてない。

 だが、あの青い瞳を持つ少女とは、これから鳴恵が死ぬまで友でありたいと願っている。

「こんな時、ママならきっと、こう言うよな。力がないのなら、力がないなりにするべき事があるってな」

 鳴恵の憧れる母がそうであったように、特別な力なんて、人と人の絆には関係ないのだ。

 六人目の魔法使い。

 無力な彼女の右腕で金のブレスレットが煌めいていた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ