13-4:オレはこんなじゃ諦めないぜ
13-4:オレはこんなじゃ諦めないぜ
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「今日のママ、格好良かったな。ああ、やっぱりママはオレの永遠の憧れだぜ」
「うん。小夜子は優しくて、厳しくて、強い。妾はそんな小夜子が大好きだ」
夜、自分の部屋にて、鳴恵とリリシアは盛り上がっていた。
話の内容は、今宵の食事の時に見せた小夜子の一面についてだった。
鳴恵は小夜子に小さな頃より憧れを抱いており、リリシアの小夜子の優しさの下に隠れた強さが大好きだった。
二人が共に心から尊敬し、敬愛している小夜子の話題が弾まないはずがない。
もうかれこれ、一時間以上こうして小夜子議題で盛り上がっている。
小夜子が望んだ二人の絆は確かに、少しずつ育まれている。
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暗闇で、魔が蠢いた。
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「うん? どうした、リリ?」
突如、ルームメイトの雰囲気が変わり、鳴恵は首を捻った。
が、彼女の本職を考えれば、その答えはすぐに導き出せる。
「奴らが、出た。鳴恵、妾は出てくる。小夜子達に説明しておけ」
そう言って、部屋を飛び出そうとするリリシアだったが、その手を鳴恵に捕まえ、動きを封じられてしまう。
「離さぬか、妾は時間がないのだ」
「分かってる。だから、オレも一緒に行く」
「何を言っておる? 妾は遊びに行くではない。一歩間違えば死が待つ戦場へ行くのだ。力のない鳴恵が来たところで、足手まといだ。
それに、戦っている妾は妾であって、妾でない。戦場にいるのは、ただの人形だ」
そう言い残し、掴む鳴恵の手をふりほどいて、青人形―リリシア・イオ・リオン―は家を飛び出した。
鳴恵も後を追いかけるが、玄関を飛び出した彼女が見たのは、召還した青の獅子に跨り、鳴恵を置いて戦場へ向かうリリシアの背中だけだった。
「リリシア!」
と叫んだ声にも青人形は振り返らない。
その小さな背中はすぐに見えなくなった。
「完全に無視して、置いていくとはね。だが、オレはこんなんじゃ、諦めないぜ」
そう呟いた鳴恵は、一度部屋に引き返し、部活で使っている弓道道具とバイクのキーを手に取り、外へ、戦場へ向かう。
魔法なんてない。
力なんてない。
だが、あの青い瞳を持つ少女とは、これから鳴恵が死ぬまで友でありたいと願っている。
「こんな時、ママならきっと、こう言うよな。力がないのなら、力がないなりにするべき事があるってな」
鳴恵の憧れる母がそうであったように、特別な力なんて、人と人の絆には関係ないのだ。
六人目の魔法使い。
無力な彼女の右腕で金のブレスレットが煌めいていた。
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