2-2:私立聖霞ヶ丘大学
2-2:私立聖霞ヶ丘大学
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教卓に立つ流誠が大学生相手に授業をしている
「ふ~ん。意外と様になってるじゃないの」
窓の外から眺めているため、彼がどんなことを喋っているのかは分からないが、それでも黒板を背にして、迷い無く一言一句を語るその姿はまさに教師と言うほか無かった。
「意外と格好いいぞ、流誠。さっすが、あたしのナイト」
アパートにいるときは絶えず笑顔の彼が、今は見違えるほど凛々しい顔つきになっている。
そのギャップが何故か、ティーカにはもの凄く嬉しいと思えることだった。
ただし、不満点もある。
「で~も、な~んで、女ばかりにしか教えてないのよ」
そう、教室の大半は女子学生によって埋められていたのだ。
その光景はティーカにとって面白くない。
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とりあえず、最初の一時限は窓の外からず~と流誠の姿を見ていた。
最初はそれで満足だったが、休み時間女子学生と楽しげに談話している流誠の姿を見て、ティーカの心の奥の何かに火がついた。
そうなると、ただ黙っているティーカではない。
次の時間のチャイムが鳴る頃、ティーカは一人売店の方へと飛び去っていた。
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二コマ目の授業中、生徒達と向かい合いながら、流誠はちらりと窓の外を見た。
そこにはもうティーカの姿はない。
彼女に見られていないと思うと、ほんの少し肩の力が抜ける。
別にティーカだからと言うわけではないが、やはり仕事をしている自分を知人に見られるのは恥ずかしいものだ。
知らずの内に力んでしまうものだ。
そんな流誠を銀髪の彼女は………。
「藤永さん、265ページ、三行目から読んでみてください」
「は~い」
この教室で格別の存在感を持つゴスロリ服を着た学生を指名することで流誠は雑念を振り払い、仕事に専念することにした。
彼女とは、もう全てが終わってしまったのだ。
何を思い出しても、何も変わらないし、何も戻りはしない。
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そして、昼休みがあけの三限目に事件はおきた。
いつもと同じように講堂に入った流誠は、そこで待っていた想定外の光景に思わず素っ頓狂な声を上げそうになってしまった。
なんとか、声は押さえ込んだものの、顔はどうしようもなかった。
公聴席の一番前に座っている紫髪の彼女が、笑いをこらえ必死に口元を覆っているから、流誠はよほどの間抜け顔をさらけ出したのだろう。
「せんせ~い。はやく授業してください」
売店で売っている学校公認のジャージに身を包んだ紫髪の女学生がぬけぬけという。
羽根は生えていないし、いつもの掌サイズでもないが、その紫髪のエセ女学生はどこから見ても間違えなく、ティーカその人(妖精?)であった。
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