13-1:黄金の6人目
13-1:黄金の6人目
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来名秋生がティーカを引き連れこの次元から去って、三日が経った。
戦いを終えた五人の魔法使い達は、皆、それぞれの道を歩いている。
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久我流誠は、講師としての仕事を続けている。
本当はこんなことしていないで、今すぐにでもティーカを助けに行きたいのだが、その手段を彼はまだ知らない。
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月島玉露は、変わらず闇法師を狩っている。
しかし、ティーカがいなくなり次元が安定したこの地では、闇法師の出現件数は激減している。
それでも、剣士の戦いは終わらない。
あの青い瞳の闇法師をこの手で狩るまで、剣士は敗者のままなのだ。
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藤永幸多は、またしても藤永小歌に戻った。
学園内をゴスロリ姿で歩き回る彼は、先の戦いで見せた決別の男と同一人物とはとうてい思えない。
しかし、その両方がまさしく彼なのだ。
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来名秋生は、ティーカへの尋問を行っていた。
何故、彼女が次元を超えてまで、あの星へ行ったのかその理由を知らねばならない。
だが、紫の妖精は一向に口を開かない。
これは長丁場になりそうだった。
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そして、リリシア・イオ・リオンは、<彼女>の元へ赴く。
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教会の上司から報告書のサインを貰い、リリシアの日本での仕事は終わった。
溜まっていた有給をここぞとばかりに取得している彼女はホテルをチェックアウトする。
目的地への行き方は既に確認してある。
電車を乗り継ぎ、目的の駅まで、この休暇のためにわざと大きめのを選んだスーツケースを転がす。
駅からは歩いて、10分と<彼女>は言っていたが、小さいリリシアが歩くとその倍ぐらいはかかってしまう。
大きなスーツケースを引きながら、リリシアの心は躍っていた。
そして、目的のマンションに付き、エレベーターに乗って彼女が住む507号室にやってくると、胸の鼓動は抑えきれない程に高ぶっている。
その様子はもう、姿相応の少女にしか見えない。
リリシアからちょっと高い所にあるインターホンを押す。
マイク越しに「誰ですか?」と問いかけられるが、リリシアはやはり無言だった。
もう一度、「誰ですか?」とインタホン越しに聞かれる。
すると、リリシアはついにその小さな口を開いた。
「妾だ」
自分でも聞こえるかどうかの小さな言葉が彼女に聞こえたか分からない。
しかし、インターホンの向こうにいる彼女は来客が誰か分かったようだ。
「おう、思ったより早かったな。今、開けるから待ってろ」
その言葉使いにリリシアは違和感を感じた。
リリシアの大好きな<彼女>はこんな雄々しき言葉を使わない。
むしろ、このしゃべり方は………。
リリシアの考えがまとまる前にドアが開き、そこに立っていたのは<彼女>ではなく、<彼女>の娘だった。
「よう、リリ。久しぶり、ようこそ神野家へ」
<彼女>にとてもよく似た美しい黒髪をなびかせながら、<彼女>の娘―神野鳴恵―がリリシアを出迎えてくれた。
リリシアは思いっきり顔をしかめながら、鳴恵を睨み付ける。
「何で、ママじゃないんだよ?って顔だな、リリ。ママは今、パパと一緒に買い物に行ってる。ま、後15分もしたら帰ってくるだろうから、上がって待ってれば良いさ」
鳴恵はそう言いながら、右手でリリシアを招き入れる。
そんな彼女の右腕には、黄金のブレスレットが託された希望を抱き、輝いているのだった。
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神野鳴恵、彼女は六人目の魔法使い。
しかし、六人目は魔力を持たない魔法使いであった。
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