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12-6:決戦

12-6:決戦


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 伸ばした手は、しかし、白い壁に阻まれ届かない。

「ティーカ!!」

 流誠の叫び声が轟くが、白のフィールドに包まれた彼に出来ることは何もない。

 朱天使の姿が小さくなっていき、ついには見えなくなった。

 流誠の伸ばされた手はもう何もつかめない。

 いや、まだ掴んでいるものはある。

 それはティーカが彼に与えたMSデバイサーだ。

 流誠は紫のカードを血が出そうなほどきつく握りしめると、ゆっくりとだが確実にカードの標的として、流誠を裏切り秋生に加勢した幸多に狙いをつけた。

 普段は優しいけど、何処か困ったような瞳が、今は鬼の形相で幸多を睨み付ける。

「藤永………」

 流誠の小さく静かな呟きが彼の心情を表せていた。

 もう、流誠は幸多を、教え子だとも、共に戦った仲間だとも思わないだろう。流誠にとって、幸多はもはやティーカを守るために戦う敵でしかない。

「先生……ティーカちゃん」

 幸多も小さく呟く。

 それは過去への呪縛を切り捨てるための儀式。

 小歌として楽しかった日々を今この瞬間だけは忘れるための呪文。

 幸多の選んだ道を最後まで走り抜くための覚悟。

 この戦いの先に、小歌に戻っても紫の妖精とその騎士が側にいないとしても、幸多は約束を果たさす。

 流誠を閉じこめていたでいた白のフィールドが不意に消えた。

「いまさら。ボクは藤永を許しはしないよ」

「幸多も許させようとは思ってない。だから、男同士、後腐れないように、正々堂々、本気のガチンコ勝負をしたいだけだ」

「そんな事、ティーカを守るボクには関係のないこと」

「確かに、これは幸多のわがまま。でも、幸多達は結局戦って、どちらかが負けるしか、分かり合う道はない。なら、幸多は幸多のやりたいようにやらせてもらうよ」

 会話はそこまでだった。

 紫のカードに呪文が刻まれ、雪色の笛に唇が添えられる。

 まるで、剣豪が対峙しているかのような静かな静寂が一体を包み込む。


 紫対白。

 緑対青。


 二つの決闘は今、静かに戦いを告げる鐘の音を待っている。

 極限の緊張状態。

 人の五感はとぎすまされて、一秒が一日にも感じられ、一時間が一秒にも感じられる世界に四人の魔法使いはいた。



紫色の気配が、この世界から消えた。



その瞬間が、決戦の始まりだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


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