表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/246

12-5:決別

12-5:決別


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


フィィィィィィ


 雪色の笛が奏でる呪文が作り出す魔法は、大切な人を守るための盾。

 あの日、交わした大切な約束をやっと果たせる日がここに来たのだ。


 魔法コーティングされた毒液が秋生に当たる瞬間、秋生の体を白の魔法が包み込み、朱天使の絶体絶命の危機を救ったのだった。

 その場にいた誰もが、状況が分からなかった。

 煙が晴れた後、そこにあるのは無傷の秋生。

 囚われたままのティーカ。

 そして、ティーカと流誠に仲間であるはずなのに、朱天使を助けた白歌姫の呪文。

 状況を整理して見えてくるのは、流誠の劣勢な現状だった。

「シャアアアアアアア。小歌、あんた、なんてことしてくれたの!」

 ティーカが叫ぶ。

 流誠と秋生も謎の行動を取った乱入者の姿を探すべく視線を這わせ、三人目の魔法使いの姿を見つけた瞬間、互いに別の意味で言葉を失うのだった。

「お主は、確か………」

「藤永さん、なのか?」

 二人の視線の先にいるのは、一人の男性だった。

 ジーンズをはき、シャツの上から白のジャケットを羽織っているラフな格好だが、その全ては明らかに男物だ。

 一瞬、別人かと思ったが、その男の手には確かに雪色の笛が握られている。

 間違えない、彼こそ、白歌姫 藤永小歌その人だ。


「ごめん、久我先生、ティーカ。幸多はこれから二人を裏切ることになる」


 いつもの元気溢れる声とは違い、男らしく落ち着いた声音が聞こえてきた。

 確かに、小歌は自分を男だと言っていたし、男である以上、今までの格好の方が異常だったのだ。

 だが、あのゴスロリ姿を見慣れてきた今、いきなり男らしい格好の姿を見ても、それが小歌であるとは上手く脳が認識できない。

 その上、今、彼はなんと言った?

「小歌は幸多。

 これは藤永小歌じゃなくて、藤永幸多の約束を果たすための、戦い。

 だから、久我先生、もし先生がライナさんと戦うというのなら、幸多がライナさんの盾になるから、覚悟しろ」

 とても冗談を言っている雰囲気ではない。

 彼の目は明らかに本気だった。

「正直、訳が分からない。なんでボクと藤永さんがティーカを守るために戦わなくちゃいけなんだ?」

「小歌もティーカちゃんは友達だって、思っている。

 でも、それ以前にライナさんは、幸多の命の恩人だから。

 ここではない異世界に飛ばされた幸多をまた、この次元に戻してくれた、命の恩人。だから、幸多は、ライナさんと約束を交わしたんだ。

 いつの日か、この恩は必ず返すと。

 そして、その約束を果たすのは今だということ」

 幸多はそう言うとティーカより与えられた雪色の笛を口元に持っていく。

「お主は、あの時、小職がこの次元に連れ戻した幸多殿なのか」

「そうです、ライナさん。あの時は本当に、お世話になりました。

 あの日、受けた恩、今やっと返すことができます。

 さあ、久我先生は幸多が抑えますから、ライナさんはライナさんのすべき事を」


フィィィィィ


 白歌姫の呪文が唱えられ、紫騎士は一瞬にして白のフィールド内に閉じこめられてしまった。

 その白壁は、紫騎士と朱天使との間を、流誠とティーカとの間を、閉ざし切り裂く。

「幸多殿。助かった。礼を言う」

「そんな。礼を言うのはこっちの方です」

 そして、朱天使は次元の扉を閉じるべく、ティーカを連れ一気に戦線を離脱するのだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ