12-4:決闘
12-4:決闘
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紅蓮の炎を翼として纏った秋生は、コインを弾く。
裏か表か確認することなく、何度も上げては落とし、上げては落とすを繰り返している。
そうすることで心を落ち着かせている。
今は、冷静に考えなくてはならない。
次元監視者としての制約から久我流誠に手を出せない自分がいかにして彼に勝つかを。
流誠はプロミス・オブ・スマイルを構えたまま深呼吸をする。
秋生の武器はあの目で捉えることの出来ない速さだ。
神速の速度を持つ朱天使にいかして攻撃を当てるか。
落ち着いて考えなくてはならない。
今、流誠に必要なのは魔法ではない、知略だ。
もう一度深呼吸をする。
秋生はコインを弾くのを止めてない。
その光景を見て、流誠の中に一つの作戦が出来上がる。
流誠はプロミス・オブ・スマイルに呪文を刻み、それを後ろにいるティーカに見せつけた。
魔力が動いた。
秋生はコインを掴むと腰を落とす。
流誠の方も何かしらの策が出来たと言うことだろう。
丁度、秋生も考えがまとまった所だった。
丁度良い。
秋生もコイン型MSデバイサーに呪文を刻む。
流誠と秋生。
どちらともなく一歩前に出た。
「久我流誠。行くぞ」
「来名秋生。覚悟」
紫の閃光と赤の火球が同時に放たれた。
しかし、その二つの狙いはそれぞれ別の場所だった。
紫の閃光の狙いは秋生から大きく外れているし、赤の火球は狙いが下すぎる。
しかし、これは彼らの狙い通りの場所なのだ。
「弾けろ!」
「切り裂け!」
赤の火球が散弾銃のごとく弾けた。
紫の閃光がまるで刀であるかのように横薙ぎに払われる。
炎は流誠を取り囲むように彼を包囲し炎の中に紫騎士を閉じこめる。
紫の刃は横方向への逃げ道をすべて塞ぎながら朱天使に迫り来る。
流誠は紫の刃の風圧で自分を取り囲む炎を消す。
紫の刃は朱天使に迫るが、しかし、朱天使は一向に動く気配を見せず、そのまま呆気なく紫の刃に切りされ、陽炎のように儚く消えていた。
そう、それは文字のごとくに。
「陽炎か!」
朱天使の動きは流誠に捉えることはできない。
なら、彼が作り出した陽炎とすれ違うのだって流誠に捉えることはできないのだ。
急いで後ろを向くが、そこでは既に流誠が作り出したシールドを破り、ティーカを握りしめている秋生がいた。
「ティーカ・フィルポーズ。確かに捕まえたぞ」
策にはめられた流誠とティーカ。
しかし、二人の顔に浮かんでいるのは落胆ではない。
そこにあるのは策士の顔だ。
「い~や、あたしはあんたには捕まらないわ。シャアアアアアア!!」
ティーカが勝ち誇った笑みで、秋生に向かって体内の毒液を吐きかける。
秋生は慌てることなく、火球を生み出すが、今度の毒液は火球に当たっても蒸発することなく、それどころか逆に火球を貫いてしまった。
これはただの毒液ではない。先程の流誠がティーカにかけた魔法によって、シールド・コーティングされた毒液だ。
火球ごときで止められるはずもない。
これが流誠とティーカの真の狙い。
流誠では秋生を捉えられないが、秋生に捉えられたティーカなら難なく秋生に狙いをつけられると言うわけだ。
ゼロ距離ともいえる至近からの攻撃だ。
火球の壁を越えられた秋生に次の手を打つ時間はない。
秋生が来るべき衝撃に耐えるべく目をつぶったその瞬間、
フィィィィィィ
三人目の魔法使い―白歌姫―の呪文が響き渡った。
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