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12-1:決起

12-1:決起


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 決起の合図を上げたのは、紫の妖精だった。

 彼女に誘われるように、5人の魔法使いが今、集う。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 偶然出会った女性の介抱によって、ティーカの傷はかなり治癒されていた。

 流石に所々、痛いところが残っているが、動けない程ではない。

 もう、わがままは言っていられない段階になってしまった。

 次元監視者がやって来た今、彼女に残された時間は少ないのだ。

「で、一番乗りはあんたなのね」

 よく特撮物でヒーローが怪人と戦っているような採石所。

 ティーカは他に被害が出ないようここを決戦の場所に選んだ。

 そこにまずやって来たのは、二人目の魔法使い―月島 玉露―だ。

「ティーカは流誠と一緒じゃないみたいだね」

「ええ。次元監視者がやって来た今、これ以上あたしのわがままで流誠を巻き込むわけにはいかないわ。後は、あたしが抗えるだけ抗うだけよ」

「ボクには、いまいち話がよく見えないけど、ティーカはそこまでして何がしたいの?」

「それはきっと、もの凄く簡単な事よ」

 ティーカは答えをぼかしたが、それ以上、玉露は彼女を問いつめはしなかった。

 いや、正確には出来なかった。

 新たな魔法使いがティーカの元にやって来たからだ。

「見つけた。いや、お主の方からここにいると波動を出してくれたのだがな」

 四人目の魔法使い―来名秋生―と五人目の魔法使い―リリシア・イオ・リオン―が立っていた。

「次元監視者。あたしにはまだやるべき事が沢山残っているの。だから、まだ帰るわけにはいかないわ」

「お主の事情など関係ない。お主がここにいること、それ自体が罪なのだからな」

 片手でコインを弾きながら、秋生が一歩前に出る。

「そして、そこの方。悪いが帰ってくれ。これはこの次元の住民には関係のない話だから」

 玉露を指さしながら、秋生は言う。

 しかし、玉露は津樹丸を鞘から抜くことで答えた。

「確かに、お前にはボクも興味はない。

 だけど、その後ろの『闇法師』は見過ごすことが出来ないね」

 津樹丸の剣先を秋生ではなく、リリシアに向けながら玉露は宣言した。

 月島の一族である剣士は、この人形のような少女に闇法師の力が流れていることを既に見抜いていた。

 玉露の瞳がリリシアのブルーアイと交差する。

「闇法師………、クレデターの事か。それにその旧式MSデバイサーを持つと言うことは、お主は月島の人間か?」

「それがどうした。闇法師を狩るのがボクの使命だ。それがどんな姿をしていようとも」

 緑剣士が駆けた。

 それに呼応して、青人形も駆ける。

 二人の魔法使いの距離は一気に肉薄した。

 津樹丸が振り下ろされ、その一撃をリリシアは手にした杖で受け止める。

 戦いの僅かな合間、リリシアは後ろに立つ秋生を目で合図を送る。

 『この馬鹿は任せろ』と。

 玉露とリリシア。

 二人の力は均衡しており、すぐには決着はつきそうにない。

 次元監視者である秋生は玉露に手出しできない。

 ならば、ここは相棒を信じて、自分は自分の仕事をするまでだ。

 秋生は改めて、ティーカと向き合う。

「大人しく、投降するのなら、危害は加えない。だが、あくまで抵抗するというのなら、容赦はしない」

「そう言われて、このあたしが素直にごめんなさいと謝ると思う?」

「いや、小職はそうは思わないな」

「それ、正解よ。

 シャアアアアアアアアア」

 答えと同時にティーカは体内で形成された毒液を秋生に向かい吐き出す。

 対する秋生の対応は冷静だった。

 コインをMSデバイサーとして魔力を充填。


『Flame Fire』


 毒液を全て、火球で蒸発させ、あまつさえ、残った火球でティーカを狙う。

 攻守が入れ替わり、ティーカは防戦一方となる。

 逃げるが、火球の雨は止まらない。

「っく」

 見切りを誤り、火球の一部がティーカの羽根を焦がした。

 バランスの取れなくなったティーカは最高の的。

 動かない標的に火球が迫り来る。


『Purple Star Are Go!』


 しかし、火球は紫の激流に飲み込まれ、消えた。

 ティーカと秋生、二人の視線の先に立つのは、遅れてやって来た、一人目の魔法使い―久我 流誠―だ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


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