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10-2:次元監視者

10-2:次元監視者


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ドックン

 海岸沿いを歩いていたティーカの鼓動が一際大きく跳ね上がった。

 クレデターではなく、クレデター以上に大きく、そして、熱いこの気配が意味する者を彼女は知っていた。

「ティーカ。この気配?」

 彼女のナイトもまた同じ気配を感じ取っていたが、ティーカと違う世界で生まれ育った彼はこの気配の意味を知らない。

 ティーカは手短に説明しようとしたが、それより前に気配そのものが彼女らの前に現れた。


ピンン


 コインが弾かれる音が響く。

 ティーカと流誠、二人は誘われるかのように、音の方を向く。

 そこに立っていたのは燃えているかのような赤く、紅い髪を持つ青年だった。

「次元監視者………」

 日本人、いや地球上のどの種族とも一致しない外見を持つ青年を見て、ティーカが呟く。

 敵か味方か分からない青年はティーカの姿を認めると小さく笑い、

 そして、言った。

「この地球に妖精は物語上でしか存在しないはずだが、一応確認しておこう。お主は、フォートラスの住民、ティーカ・フィルポーズだな」

「違うといえば、あんたはあたしを見逃してくれるの?」

「いや、違ったとしても、お主はこの次元の住民ではない。何処であれ、元の居場所に帰ってもらうだけだ」

 こいつは、ティーカにとって敵だと判断した流誠は、赤髪の青年を刺激しないようにゆっくりと紫色のカードを取る。

 しかし、

「おっと、そこのお主が何者か知らないが、余計な手出しはしないでくれ。この次元の住民であるお主には関係のない話である故な」

「そうでもないよ。ボクはティーカを守るナイトなんでね。ティーカに関わる話はボクに関わる話でもあるんだよ」

 そう宣言した流誠はカードを前に掲げる。

 まだあの青年を攻撃するつもりはないが、下手な動きをしないようカードでロックする考えだった。

 が、カードを掲げたその先に、あの青年はいなかった。

「ほう、MSデバイサーを持っているのか。それも教会支給品ではないにも関わらず、その高性能品。ティーカ・フィルポーズから受け取った品か」

 声は背後から聞こえた。

 紫騎士の背中を冷たい汗が流れ落ちる。

 

 背後から感じるのは、炎だった。

 見えたのは、赤だった。

 一瞬の出来事に何一つ反応できなかった。


 月島玉露も早かった。

 しかし、この赤髪の青年の速度は人間という範疇を超えている。

 もう一度、流誠の背中に冷たい汗が流れ落ちた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


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