10-2:次元監視者
10-2:次元監視者
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ドックン
海岸沿いを歩いていたティーカの鼓動が一際大きく跳ね上がった。
クレデターではなく、クレデター以上に大きく、そして、熱いこの気配が意味する者を彼女は知っていた。
「ティーカ。この気配?」
彼女のナイトもまた同じ気配を感じ取っていたが、ティーカと違う世界で生まれ育った彼はこの気配の意味を知らない。
ティーカは手短に説明しようとしたが、それより前に気配そのものが彼女らの前に現れた。
ピンン
コインが弾かれる音が響く。
ティーカと流誠、二人は誘われるかのように、音の方を向く。
そこに立っていたのは燃えているかのような赤く、紅い髪を持つ青年だった。
「次元監視者………」
日本人、いや地球上のどの種族とも一致しない外見を持つ青年を見て、ティーカが呟く。
敵か味方か分からない青年はティーカの姿を認めると小さく笑い、
そして、言った。
「この地球に妖精は物語上でしか存在しないはずだが、一応確認しておこう。お主は、フォートラスの住民、ティーカ・フィルポーズだな」
「違うといえば、あんたはあたしを見逃してくれるの?」
「いや、違ったとしても、お主はこの次元の住民ではない。何処であれ、元の居場所に帰ってもらうだけだ」
こいつは、ティーカにとって敵だと判断した流誠は、赤髪の青年を刺激しないようにゆっくりと紫色のカードを取る。
しかし、
「おっと、そこのお主が何者か知らないが、余計な手出しはしないでくれ。この次元の住民であるお主には関係のない話である故な」
「そうでもないよ。ボクはティーカを守るナイトなんでね。ティーカに関わる話はボクに関わる話でもあるんだよ」
そう宣言した流誠はカードを前に掲げる。
まだあの青年を攻撃するつもりはないが、下手な動きをしないようカードでロックする考えだった。
が、カードを掲げたその先に、あの青年はいなかった。
「ほう、MSデバイサーを持っているのか。それも教会支給品ではないにも関わらず、その高性能品。ティーカ・フィルポーズから受け取った品か」
声は背後から聞こえた。
紫騎士の背中を冷たい汗が流れ落ちる。
背後から感じるのは、炎だった。
見えたのは、赤だった。
一瞬の出来事に何一つ反応できなかった。
月島玉露も早かった。
しかし、この赤髪の青年の速度は人間という範疇を超えている。
もう一度、流誠の背中に冷たい汗が流れ落ちた。
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