10-1:She see sea
10-1:She see sea
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「ねえ、流誠、あんた明日仕事休みでしょう。海、見に行くわよ!」
お風呂上がりにビールを飲んでいた流誠に向かいティーカが宣言した。
そーいう彼女の指さす先のテレビには、綺麗な海岸が映しだしている。
まあ、何というか、何でそんなこと言い出したのかとてもよく分かる光景だ。
「予定はないから、別に問題ないよ。どうする、誰か一緒に行くって誘う?」
「嫌~よ。あたしはあんたと二人きりで行きたいのよ。良いこと、明日は早いわ、早く寝て、早く起きて、お弁当作るのだって、忘れちゃ許さないんだからね」
「はいはい。ボクはティーカのナイトだからね。その辺はぬかりないですよ」
「そ~よ、分かっていれば良いのよ」
流誠の浮かべた笑顔に、顔を真っ赤にし動揺しながらもティーカは小さく笑顔を浮かべるのだった。
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「海よぉぉぉおおぉ!」
眼前に広がる大海原に向ってティーカは叫んだ。
今は六月。
海開きにはまだ少し早いこの季節に海に来る物好きは、彼女とそのナイトぐらいのもののようだ
もっとも、この広大な世界がまるで独占できているかのようで、ティーカは余計にハイテンションになってしまっているのだが。
「ほら、流誠。何、突っ立てるのよ。楽しみなさいよ、駆け回りなさいよ、飛び回りなさいよ」
紫の妖精の笑顔が飛び回る。
それは何よりも幸せな光景。
ナイトとして、戦い続ける流誠への最高の報酬であり、そして戦い続けることの源となる時間が今、ここにある。
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白光の世界に細波が聞こえる。
コインを弾く音が散光に響く。
何処か別世界に繋がってしまいそうな幻想的な世界の中で、赤髪の天使はそこにいた。
「この波動、ターゲットが近くにいるのか」
四人目の魔法使い、来名秋生はわずかに眉をひそめた。
ここで探し人を見つけられたのは全く偶然、それ故にどう行動したものか判断に困ったのだ。
そんな時に、彼が取る行動はただ一つ。
「裏なら行く、表ならリリシア殿が来るまで待つ」
秋生はそう言うと、手にしていたコインを一際高く空へと弾いた。
美しい曲線を描き、砂浜に墜ちたコイン。
そこに描かれた美しい天使が意味するものは、
「裏か」
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