9-4:満月~四人目~
9-4:満月~四人目~
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空には満月が浮かんでいる。
そして夜空に向かって、朱のコインが弾かれ、加速度を失ったそれはやがて重力に従い下へと落ちていく。
落ちたコインは親指の上に着地し、また上に弾かれた。
「さあ、目標はこの辺りだな」
男はコインを弾くのを止まることなく呟いた。
とても日本人とは思えないその赤髪は着色したにしては妙に自然である。
日本人、いや人間とは根本的な何処かで違っていると思えるほど、その男は異様な雰囲気を纏っていた。
「念のため、教会に応援は頼んでおいたし、これからどうする、小職?」
美しい満月を見上げながら、男は路頭に迷う。
こんな綺麗な月の日に戦いはしたくないし、教会からの応援を待ってから動いた方が得策なのは明らかだ。
「まず、しなくてはならないのは、食事か、睡眠か」
結局は二択。ならば話は早い。
男はコインを一際高く弾き、落下途中のそれを左手で掴み取ると右の甲に乗せた。
裏か表か。
所詮、世界なんてこの二択に集約されるのだ。
男はゆっくりと左の手をずらし、そこに見えたのは『裏』だった。
「裏か。ってことは、食事だな」
これからの行動が決まった男はコインをポケットにしまい………いや、しまおうとしたがその前に奴らの気配を察知してしまった。
「この気配は、シネア……いや、普通のクレデターか。近くに月島の人間が居る気配は無しか。微弱故、まだ気づかれていないのか。だが、なんにせよ、小職は気づいてしまったか」
男はもう一度赤のコインを弾き、落ちてきた赤のコインを手に取るとその顔つきはもはや、騎士ではないかと見間違えるほど凛々しかった。
『Flame Fly』
コインの円周に魔性呪文が刻まれると、男の背中から炎の翼が生まれた。
翼が羽ばたき、男の体はゆっくりと空に浮かぶ。
敵、クレデターの数は3。
どれもそれほど大きな個体ではないし、いずれはこの島にいる月島の人間が狩ることだろう。だが、
「今は、これ以上、次元を刺激したくない故な」
最後にそう呟き、四人目の魔法使い~来名 秋生~は、朱天使となり夜の中に飛んでいくのだった。
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