9-3:満月~小歌&乃花~
9-3:満月~小歌&乃花~
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空には満月が浮かんでいる。
ヘッドホンから聞こえてくる瀬戸乃花の歌に耳を傾けながら小歌は月を見ていた。
瀬戸乃花の突然死にマスコミは大いに盛り上がり、又、小歌を含めたファンは大いに悲しんだ。
瀬戸乃花が死んで、もうすぐ一週間。
これから先の未来で、彼女の新曲を聴けなくなるなんて未だに信じられない。
「君はあんなに煌めいて ボクを銀色に染める
うさぎが餅搗く夜 世界の扉開く
狂わしくなり 愛おしくなり 怖いから守りたい
失わせはしない 育てよう 育もう 二人の導」
満月を見ながら小歌は歌う。
この歌はきっと魔法だから、小歌が雪色の笛で使うよりももっと多くの人に勇気を与えることが出来る偉大な魔法なんだ。
あの時、幸多が言葉も通じ合えぬ見知らぬ異次元の世界で、苦しんでいたとき心の支えとなってくれたのは瀬戸乃花の歌だった。
彼女の歌があったから、あの世界で生きてこれた。
幸多は小歌になってしまったけど、彼が助けに来てくれて、無事にこの世界にだって戻ってこれた。
歌は魔法なんだ。
どんなに苦しでいる人にだって、歌は聞こえる。
例え檻に入れられていても、例え男を呼び込まなくては明日を生きていけない時であっても、歌は耳に入ってくる。
「君が変わる ボクも変わる でも、真実は変わらない
時間の旅をくり返り 変わり行く二人 何処が違っていく
満ちては欠けてゆく世界 光は常に半分だけ
何処が見えて、誰が見てる それだけで
この世界は変わり続けていく
月の夜 三日月が昇り、半月が沈み、満月が輝く夜
どれも同じmoon 変わっていないのに、変わっていく
君とボクの導も、変わらずに変わり続けていく
それでもいいさ。変わる物と変わってしまう物
その両方を、ボクらは見つめていようよ」
小歌は月を見る。まるでコインのごとく丸い月を見て、あの世界とそこから助け出してくれた彼の姿を思い出す。
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