9-1:満月~流誠&ティーカ~
9-1:満月~流誠&ティーカ~
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空に満月が浮かんでいた。
「綺麗なもんね。あたしの世界だと、星があんなに大きく見えるなんてことなかったわ」
学園からの帰り道、いつもように流誠の肩に座ったティーカが空を見上げていた。
「へえ、衛星がない惑星に住んでいたんだ。っていうか、そもそもティーカって何処からきたのさ?」
「それは、秘密よ。どうしても聞きたいって言うのなら、あたしのお願いを10個聞いたらヒントぐらいなら教えてあげるわよ」
「ふ~ん」
「何よ、そのやる気のない返事は。あたしの秘密知りたくないっていうの?」
目尻をつり上げ、腹いせとばかりに小さな拳で流誠の頬を殴りつける。
「どうだろうね。ティーカが何処から来てようが、ボクが騎士であることには変わりないから、割とどうでも良いことかもしれないね」
さっきまで怒りで赤くなっていたティーカの顔が別の要因で赤くなる。
この流誠という男、たまに恥ずかしい台詞と臆面もなく口にしてしまう。
「そ、そうよ。あんたは何があっても、あたしの騎士なんだからね。そこの所、しっかりと胸に刻み込んでおきなさいよ」
そう言うと、ティーカは流誠の肩から飛び出した。
紫の羽根を羽ばたかせ、満月が放つ白銀の光を全身で受け止めようと、自由奔放に空を舞う。
「う~ん。最高に気持ちいいわ。どう、流誠、あんたも飛んでみない」
「ボクには無理だよ」
「そうでもないわよ。あんたには、あたしが与えた魔法があるでしょうが」
「だからって、道ばたでいきなり人が浮かんで、空中遊泳楽しんでいたら、騒ぎになるよ~~」
そうこう話している内に、ティーカはさらに上へと昇っていき、流誠の最後の言葉は叫びかけるような感じになってしまっていた。
白銀の月を背に、紫の妖精が、漆黒の夜空を飛んでいる。
それは、なんとも幻想的な光景で、流誠は自分が騎士として守っていく彼女の存在を再確認するのだった。
そう、この共に過ごした時間が絆を育み、ティーカは流誠の中で大きな存在となっていた。
あの彼女の美しい銀髪を思い返させる満月を見ても、もう、銀髪の彼女は脳裏をよぎらない。
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