8-2:次元を超えた者
8-2:次元を超えた者
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ゴスロリ姿の少女に睨み付けられ、黒服の中でもとくに短気な二人が堪忍袋の尾が切れ、小歌に襲いかかった。
彼らのプライドからしてみれば、こんな尻の青いガキに舐められたというだけで耐えられない屈辱なのだ。
「おい、女。生意気な目しやがって、もう泣いても許さねえぞ」
怒り心頭の顔を小歌に近づけてくる。
もう少しで唇と唇とが重なり合いそうな程に男の顔が近づいてきているというのに、小歌は顔をしかめるどころか、逆に自ら男との距離を縮めた。
驚いた男が慌てて身を引いたため、唇が重なり合うことはなかったが、小歌の突然の行動に黒服は皆、とまどい互いの顔を見合わせてしまう。
「女、お前、一体なんのつもりだ?」
「別に。小歌ってひ弱だからね。おじさん達と拳でやり合って、勝てる自身はちょっと無いかな。
だから、おじさん達は好みのタイプじゃないけど、小歌は小歌なりの戦い方をしようかなって思ったの」
そう言って、小歌はその手からゴーちゃんを手放し、妖しい瞳で黒服達を見つめるのだった。
「おいで。小歌が禁断の果実の味、教えてあげる。もし、これが終わって、立っていられるぐらいの気力が残っているのなら、この勝負はおじさま達の勝ちよ」
そう言って、紅い下が自らの唇を舐めた。
まさに禁断の果実であるとは知らず、愚かな男達は小歌に誘われていく。
フィィィィィィ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
3分後、駐車場には1人残らず、白目をむいて倒れている黒服の男達がいた。
一方、小歌はと言うと、いつもと変わらぬ笑顔でゴーちゃんを抱きかかえていた。
「ゴーちゃん、お待たせ。ごめんね、もう、何処の次元でも男って助平根性で生きているんだからね。
小歌がちょっと誘うと、もういちころで騙されるんだから。
あはは、で、近づいてきた所で、一気に魔法ではじき飛ばして、退治してあげたよ。あはは」
あははっと笑う小歌だが、その笑顔に隠しきれぬトラウマが潜んでいることに気づく者は残念ながら、ここにはいない。
「さあて、あいつらの仲間が来たら厄介だ。何処か別の場所に逃げようか………
あ、っと、ゴーちゃん」
小歌の提案に従った訳ではないのだろうが、小歌の腕からゴーちゃんは飛び降り、何処かへ走り出していった。
「あ~~~、ちょっと待ってよ、ゴーちゃん」
慌てて、ゴーちゃんを追いかける小歌だったが、この時既に彼は僅かな次元の違和感を感じていたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




