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7-6:小さな歌が響くとき

7-6:小さな歌が響くとき


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 個室に音楽が流れ始める。

 カラオケボックスへとやってきた小歌はマイクを握りしめる。

 玉露を引っぱたいた平手はまだ痛いし、玉露に殴られた脇腹だって全然痛みは退かない。

 

 それでも、小歌は歌う。

 

 瀬戸乃花を守れなかった魔法使いはせめて、彼女の遺志だけは守り抜かなくてはと誓う。

「それじゃ、先生、ティーカちゃん。小歌の、瀬戸乃花に比べたら全然だけど、小歌の歌、聞いていてね」

 たった二人の観客に向かい、小さな歌が紡がれた。



 明日に高く、空を歌う、勇気 羽ばたけ


 小鳥たちはやがて空を飛ぶのに 私たちはいつまでも空を飛べない

 空に憧れ、明日に飛び出したくて、私たちはいつでも上を見上げている

 青に染まって 雲を駆けたくて 私たちはいつの日でも願っている


 寂しさ感じて逃げたいとき 孤独を感じて怯えているとき

 いつもそこに蒼天の空があった。いつもそこから見守ってくれていた

 真っ直ぐ手を伸ばして、この手に青空をつかみ取りたくて

 瞳の中に輝く星空、この手で優しく抱きしめたくて

 小さな想いが空を舞う


 明日に高く、空を歌う 勇気 羽ばたけ

 いつか私も空になり 誰かを見守っていく



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 玉露は津樹丸を片手に独り、街を歩いている。

 瀬戸乃花を退治した緑剣士は、次の闇法師を狩るべく前へと進む。

 まだ夜は長いのだ。



 孤独な僕 親友な彼 大切な君

 世界って怖くて 不思議な場所

 でもね、僕たちはここで生きていく

 過去に飲み込まれそうになったり

 夢に惑われさそうになっても

 強い風のように けして歩むのを止めないで


 堕天使のように 堕ちても気高く

 迷いながらも 強く走り続けて


 街頭スクリーンで瀬戸乃花が歌っている。

 彼女の歌を聴いても緑剣士はやはり何も感じず、その足を止めることなく進んでいく。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


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