7-6:小さな歌が響くとき
7-6:小さな歌が響くとき
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個室に音楽が流れ始める。
カラオケボックスへとやってきた小歌はマイクを握りしめる。
玉露を引っぱたいた平手はまだ痛いし、玉露に殴られた脇腹だって全然痛みは退かない。
それでも、小歌は歌う。
瀬戸乃花を守れなかった魔法使いはせめて、彼女の遺志だけは守り抜かなくてはと誓う。
「それじゃ、先生、ティーカちゃん。小歌の、瀬戸乃花に比べたら全然だけど、小歌の歌、聞いていてね」
たった二人の観客に向かい、小さな歌が紡がれた。
明日に高く、空を歌う、勇気 羽ばたけ
小鳥たちはやがて空を飛ぶのに 私たちはいつまでも空を飛べない
空に憧れ、明日に飛び出したくて、私たちはいつでも上を見上げている
青に染まって 雲を駆けたくて 私たちはいつの日でも願っている
寂しさ感じて逃げたいとき 孤独を感じて怯えているとき
いつもそこに蒼天の空があった。いつもそこから見守ってくれていた
真っ直ぐ手を伸ばして、この手に青空をつかみ取りたくて
瞳の中に輝く星空、この手で優しく抱きしめたくて
小さな想いが空を舞う
明日に高く、空を歌う 勇気 羽ばたけ
いつか私も空になり 誰かを見守っていく
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玉露は津樹丸を片手に独り、街を歩いている。
瀬戸乃花を退治した緑剣士は、次の闇法師を狩るべく前へと進む。
まだ夜は長いのだ。
孤独な僕 親友な彼 大切な君
世界って怖くて 不思議な場所
でもね、僕たちはここで生きていく
過去に飲み込まれそうになったり
夢に惑われさそうになっても
強い風のように けして歩むのを止めないで
堕天使のように 堕ちても気高く
迷いながらも 強く走り続けて
街頭スクリーンで瀬戸乃花が歌っている。
彼女の歌を聴いても緑剣士はやはり何も感じず、その足を止めることなく進んでいく。
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