7-1:さあて、今回のゲストは………
7-1:さあて、今回のゲストは………
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「あ~、瀬戸 乃花だ」
街角にある大型テレビ画面を指差してゴスロリがうれしそうに言う。
「あの顔、たまにテレビで見るわね」
「へえ、藤永は瀬戸 乃花が好きなんだ」
「そう、もちろんだよ。小歌は乃花のCDから一作目から全部持ってるんだし、カラオケだと、乃花の歌は十八番だしね。
良いよね、乃花のあの力強い歌声って聞いてると元気と勇気が湧いてくるんだよね。まだオリコン順位で1位は取ったこと無いけど、何時か必ず、瀬戸 乃花ならトップを取るって小歌は信じてるんだよ」
両手を握り、可愛らしく宣言する小歌。
そんな彼女の仕草に、偶然すれ違った30代前後のサラリーマンが結婚3年目以降感じたことのなかった胸のときめきを覚えた。
全く持って、藤永小歌とは罪な男である。
っと、話が脇にそれてしまったが、今、小歌と流誠、ティーカは街を歩いている。
何で歩いているかというと、小歌は新着ゴスロリ服を買うために、流誠(+おまけのティーカ)は本屋に行くために別々に街に出てきて、つい先程ばったり合ったって設定だ。
この偶然をティーカは「呪いだ」と嘆き、小歌が「運命だ」と歓喜したのは、話とは全く関係のない裏話。
「先生は、瀬戸 乃花好きなの?」
「どうだろうね。確かにあの力強い歌声は、多くの人を惹きつける魅力を持っていると思うし、凄い歌手だとは思う。
けど、正直ボクは苦手かなというのが正直な所だね」
「え~~、どうしてだよ~~」
「それは、多分、彼女の作る歌は、あまりにも綺麗すぎて、あまりにも美しすぎて、あまりにも嘘ぽいって感じてるからかな」
「う~~、確かに、瀬戸 乃花は小歌達の世代には絶大な人気があるけど、先生みたいな年配世代には今一なんだよね~」
そんな芸能話を(少し前まで別次元の世界にいたティーカには全く分からない)しながら、紫騎士と白歌姫は街の中へ進んでいく。
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場所は変わって、某所のスタジオ。
「お疲れ様で~す」
スタッフ達に元気よく声をかけるのは、今回のゲストキャラ、瀬戸 乃花。
アイドルとして鍛え上げた笑顔は、さしも小歌でさえ赤子に思えるほどのテクニックだ。 流石は、プロ。その技で食っているだけのことはある。
すれ違う人たちみんなに笑顔を振りまきながら、乃花は楽屋まで戻ってきた。
乃花から笑顔が落ちた。
能面のような無表情になった乃花の背から黒い沼気が立ち上る。
「あ~~~、誰かのために笑うのってめんどくさい。もうみんな死んじゃえばいいのに」
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