6-6:雪色の笛 フィィィィ
6-6:雪色の笛 フィィィィ
「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
ティーカは開いた口が塞がなかった。
何というか、自分が無性に哀しくなったのだ。
まさか、男相手に焼き餅焼いていたり、あ~だこうだといらぬ心配をしていたりしていた自分を思い返すともはや滑稽にしか思えない。
「あれ、ティーカちゃん、もしもし、そんな真っ白になってどうしたの?」
衝撃のあまり石化したティーカをメイド服姿の小歌は指で突く。
だが、ティーカは未だに空中停止したまま動かない。
「先生、ティーカちゃんに小歌の事教えてなかったの?」
「っというか、そんな事実ボクも初めて聞いたんだけど」
クレデターを牽制しながら、流誠が答える。
こんな気の抜けない戦いの最中にそんな爆弾発言は止めてくれと言うが本音だったりする。
「あれ?おかしいな。そうだっけ?」
それは、もう男が見たら、何人かはころりと墜ちてしまいそうな笑顔だ。
「失敗だね~」
その上、可愛らしく舌まで出してくる辺り、こいつは本当に男なのかと問いつめたくなる。
「シャアアアアアアアア。小歌、あんた今の話本当なの?」
「あ、急に復活した」
「どうなの。ねえ、早く答えなさい!」
「ティーカちゃん。落ち着いて、落ち着いて。大丈夫、幸多は正真正銘の男だよ。
なんなら、下触ってみる、そうしたら小歌が嘘言ってないって信じてくれるでしょう」
そう言って、メイド服のスカートをまくり上げようとする小歌。
「止めなさい。そんな汚らわしいもの触りたくなんかないわよ!」
「え~でも、そんなストレートに言われると、小歌哀しいよ~~」
この危機的状況全く分かってないであろう会話に、流誠は本気で頭が痛くなってきた。
「ティーカ。ごめん、喧嘩は後にして、ボクもそろそろ持たないよ」
『Purple Star』を避け、クレデターに付かれた男が流誠の眼前にやって来た。
醜く裂けた口を大きく広げ、紫騎士を喰おうとする。
流誠は両手で閉じようとする口を塞ぐが、力は敵の方が勝っている。
「シャアア。そのようね、藤永小歌。いいこと、このあたしがあんたを選んでやったのだからありがたく思いなさい」
ティーカはそう言うと、小歌に雪色の笛を差し出した。
大きさはサッカーの審判が持っているホイッスルほどだが、美しく施された装飾のせいで、印象は全く違う。
「ティーカちゃん、これは?」
「あんたのMSデバイスよ。良いこと、あんたがしなければならないことはただ一つ、あたしのナイトの手助けをすることよ!」
紫の羽で空に浮き、ティーカは小歌に宣言する。
「先生の手助け………。きゃ、それって小歌が先生のパートナーになるって事。やった、それじゃこれで一気に久我先生の好感度アップだ」
男だと分かっていても、見た目は可愛いメイドにしか見えない小歌にそんなこと言われると、思わず眉がピクリと反応してしまう。
何か言ってやらないと気が済まないティーカを無視して、三人目の魔法使いは今、覚醒する。
「それじゃ、小歌、行くよ」
雪色の笛を口にあて、小歌は白歌姫として美しい音色を響かせる。
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