37-2:エピローグ
37-2:エピローグ
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通過電車が駆け抜ける風がホームを吹き抜けた。
鳴恵は咄嗟に髪を押さえ、乱れる黒髪を押さえ込んだ。
「秋生さんも、それに小歌もがんばって自分の道、進んでいるんだな。オレもしっかりと決めないといけないな」
髪を押さえていた手を外し、夜空に浮かぶ星空を何処か遠い目で眺めながら鳴恵は呟いた。
「玉露殿も言っていたが、鳴恵殿は今、大学四年生なのだな。就職先は決まったのか?」
「その答えは、玉露から聞いているんじゃないんですか?」
「玉露殿が、小生の手伝いに来てくれたのは、二週間前だ。その後の展開は聞いていない。が、その答え方からするとまだ、決まっていないのだな」
秋生の台詞に鳴恵は肯定の苦笑で答えた。
「色々と考えてはいるんですけど、決まらないです。
リリシアみたいに教会に入って、クレデターや悪魔から世界を守る道もあるし、ママが選んだみたいに普通の道を進みながらも普通だから出来ることで世界を守る道もある。
オレはこの世界を守りたいけど、道は掴みきれない程沢山あるから、どれを選べば良いのか、決められないんです。
このままじゃ、本当、就職浪人ですよ。あはは」
鳴恵は場の雰囲気を変えようと笑ったが、秋生は笑わず、変わりに静かに言った。
「だが、夢は持っているのではないのか?」
その言葉に鳴恵はしばし黙った。
自分の心を整理するかのように、あるいは覚悟を決めるかのように三度、静かに深呼吸した。
ホームにいる誰かの話し声が聞こえた。
彼らは星座の話をしていた。
「どうして、そんな事を言うんですか?」
「小生も今は夢を持っている故な。なんとなくそう思っただけに過ぎぬが、外れてはいなかったようだな」
「……夢って言うか約束があるんです。常識的に考えては絶対に叶わない、数万光年越しの約束があるんです。
オレは絶対に諦めたりしないけど、どうすればあいつとの約束を叶えることが出来るか、オレには分からなかった」
鳴恵は顔を上げ、星を見上げた。
そこに見える星の何処かにかつて彼女が約束を交わした盟友がいるのだろうか。
「でも、ティーカやサクラは次元を越えて自らの幸せを手に入れた。
あいつらを見た今、オレは少し焦っているんです。焦っても、良い結果が出るわけでもないと言うのに………」
鳴恵は天に向かって手を伸ばした。
星は果てしなく遠く、一生かかっても掴むことは出来ないだろう。
次元を飛び越えることが出来ても、この宇宙を飛び越える事は出来ないというのだから、魔法だって万能ではない。
「でも、そうですよね。オレには約束があるんです。もしかしたら、凄い馬鹿を見て一生を棒に振るかもしれないけど、人生を賭けるだけの価値はあるとは、確信してます。
うっし、となれば、まずは、玉露とリリシアに相談だな」
少しは決心がついたのだろうか。
鳴恵は小さくガッツポーズをすると、夜空に煌めく星々以上の輝きを秘めた瞳で、宇宙を見つめた。
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