M-45:大好き、よ
M-45:大好き、よ
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愛理子と近衛蘭が結ばれた。
二人を見守りながら、あたしはどうしても一つだけ確認しておきたいことがあった。
多分、コレをはっきりさしておかないと、あたしはこれから魔法天使パラレル・ティーカの姿………って明日から魔法天使シリアル・アリスの姿でお兄ちゃんを起こしに行く度に、お兄ちゃんが消えているんじゃないかって不安に怯えてしまうことになると思う。
「ねえ、お兄ちゃん。お兄ちゃんはアトロポスになって…確かに……消えたよね。それなのに、どうして、またあたしの前に現れたの?」
もしかして答えを聞いたら、12時を迎えてしまったシンデレラのようにこの幸せな魔法が解けてしまうのではないかと不安もある。
でも、大丈夫、あたしの想いは、今、弾けてる。
今なら次元の一つぐらい作れそうな気さえするぐらい幸せな想いが弾けてるよ。
だから、この想いをこれからも続けていくために、あたしは聞かなくちゃいけない。
もし今が偽りの幸せだったら、あたしから壊して、本当の幸せをあたしが作ってみせるんだから。
だって、あたしは魔法天使なんだもん。
「詳しいことはボクにもよく分からない。
でも、アトロポスと一体化していたから、アトロポスを使うときの定香の想いはとてもよく分かる。
定香はボクのことを想って、アトロポスを使って、クロートが生み出して次元を断ち切った。
でも、多分、その時の定香の想いが強力すぎたんだろうね。
本当はクロートが生み出した次元さえ断ち切れば良かったのに、定香はボク達が産まれ育ったこの次元さえもアトロポスで断ち切ってしまったんだよ。
その結果、ボク達が産まれた次元は本来の姿とは少しだけ変わってしまった。
定香がずっと想ってくれていた、ボクがアトロポスとなって消えないそんな世界に変わってしまったんだよ」
あたしはお兄ちゃんの言葉の中から、大切な部分だけを取りだして頭の中で再構築してみた。
「え~~と、つまり、要約すると、あたしの想いが世界を変えちゃったって事?」
「本当に簡単に言うとね。
だから、今のボクはアトロポスからボクの想いだけが切り取られた存在。
とは言っても、多分これが本来の正常な状態なんだと思うけど」
なんか概念的過ぎてあたしには今イチ理解出来ない。
とりあえず、目の前のお兄ちゃんはやっぱりあたしのお兄ちゃんで、もうアトロポスの事を考える必要性もないみたいだから、喜んで良いみたい。
「そうか!! だから、自分たちが戻ってくるときに僅かな次元変動が発生していたのですね。本来なら消えていなければならないお兄様がアトロポスのせいで復活してしまった。それが次元変動の原因………ゲフ!」
勝手に何かを納得したイリルが熱い口調で解説を初めたけど、本当に暑苦しかったから手元にあったハエ叩きでたたき落とした。
全く、読者への一応の説明も終わったのだから、ここからのシーンで必要なのは暑苦しさではなく、甘いロマンスに決まっているでしょう。
全く、本当に最後の最後まで空気の読めない奴なんだから。
手に持っていたハエ叩きをテーブルの下に隠して、あたしはお兄ちゃんに向き合った。
テーブルを挟んだ反対側では、愛理子と蘭がもう羨ましいぐらいにいちゃいちゃしている。
そんなラブラブぷり見せられると、あたし達も負けられないよね、お兄ちゃん。
そしてあたしはお兄ちゃんの顔を正面からのぞき込んだ。
「ねえ、お兄ちゃん。最後にもう一つ。お兄ちゃんは、なんで愛理子の体にあたしの心が入っているって分かったの?」
「アトロポスのおかげなのかな。定香の想いがボクにはちゃんと見えたんだよ。
例え、体は違っても想いは、ボクの愛した定香のままだったからね」
きゃああああああ。恥ずかしいよ、お兄ちゃんの顔がこんなにも近い状態でそんなこと言われちゃうと幸せすぎて昇天しちゃいそうだよ。
でも、ここで浮かれていたら駄目だ。
勢いまかせとかじゃなくて、真っ正面向き合って、ちゃんとこの言葉を言わないことにはあたしとお兄ちゃんの恋愛物語は始まらない。
心臓がバクバクしている。
やっぱり、この言葉は魔法なんだと思う。
でも、考えて見れば、当たり前だ。
魔法の源は想い。
そして、この言葉は、女の子が一生で一番想いを込める言葉なんだから。
魔法に決まっている。
「お兄ちゃん。あたしは、お兄ちゃんが大好き、よ」
弾ける想いを届ける 魔法天使パラレル・ティーカ ただいま告白、よ。
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