6-4:闇付かれし者
6-4:闇付かれし者
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玉露が、メイド服のかわいらしさに恐れをなして逃げ出してから30分後。彼はやって来た。
「お帰りなさいませ、ご主人様!」
メイドの出迎えに、彼はただ頷き椅子に座る。
絶対に健康と体によろしくない会話で盛り上がっていた、ティーカと小歌も彼が入ってきた瞬間、ぴたりと会話を止めた。
「流誠、あいつ、間違えなさそうね」
「そうみたいだね。でも、ここだとメイドさん達に被害が出てしまうから、あいつがこの店を出た後だね」
そう言って、流誠はポケットの中で紫のカードを握りしめる。
あいつは恐らく流誠の正体に気づいていないはずだが、万が一の場合、対応の遅れは他人をも巻き込むことになる。
「先生、あいつだよ、小歌が言ったのは。最近、よくこのお店に来るんだけど、なんだろう。小歌ね、ものすごく薄気味悪いの。
同僚達に言っても、誰も理解していくれないけど、あいつ、絶対に何処か違うんだよ。
小歌もよく分からないけど、違うって言うのは分かるんだよ」
ステルスの魔法を破って、ティーカの姿が見ているという事は、小歌は少なからず魔法の才能があるという事だ。
その常人にはないその才能が、無意識的に彼をクレデターと認識してしまったのだろう。
「藤永、あんた、MSデバイサーもないのに、そこまで分かるのね」
MSデバイサーは魔力増幅装置。
MSデバイサーを使わずに、クレデターにつかれた人間をかぎ分けるなんて、もし彼女がMSデバイサーを持ったら一体どれほどの探査能力を持つ魔法使いになるというのだろうか。
「先生、ティーカちゃん。二人は何を知ってるの? ねえ、知ってるんだったら、小歌に教えてよ。あの気味悪い奴は一体何者なの!」
その瞬間、世界の色が変わった。
全てが白と黒で表現された世界に変わってしまった。
「え?え?え? 何これ? また異世界?」
「ティーカ。これは?」
「やられたわ、流誠。結界張られたの。罠にかけたつもりが、逆にあたしたちが罠にかかってしまったって事よ」
この世界にいるのは、流誠とティーカ、小歌。
そして、クレデターに取り憑かれ背後から黒い霧を立ち上らせている彼だ。
「魔力だ。美味しそうな、魔力をもった奴がこんなにいる。喰ってやる、全部、喰らい尽くしてやる」
口からよだれを垂らしながら、彼は狩りを始める。
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