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M-39:最終決戦

M-39:最終決戦


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 あたしが飛ぶのと同時に、シリアル・アリスが飛ぶのも確認できた。

 紫と桜。

 二色の魔法天使が、黒蘭色の想いにめがけて、翼を羽ばたかせている。


「定香さん。一気に決めましょう!」


 黒蘭色の人影との距離を一気に詰めているあたしの腕の中で、イリルがいつも以上の熱い口調で語っていた。


「何なのよ、急にやる気出しちゃって」

「自分は、定香さんを信じています。定香さんは、最高の魔法天使です。定香さんの想いなら、きっとアトロポスも使い切ることが出来ます。だから、弾ける想いで、一気に次元を救いましょう!!」


 おかしいな。

 今日は別にイリルを殴っても、壁に叩き付けてもいないはずなのに、なんか変なスイッチが入ったみたい。

 場の空気でアドレナリンが分泌しすぎたのかな?

 それとも、あたしの相棒は一時間に一回は頭に衝撃を与えないと壊れちゃうっていう秘密を抱えていたのかな。

 謎だ。

 そしてもって、そこまで熱い口調で褒められると、流石のあたしもちょっと恥ずかしい。

「ねえ、イリル………」

「愛理子さんは、その銀色の石、ラケシスを奪って下さい。

 その隙に定香さんはアトロポスで今、まさに形成されているあの次元を断ち切って下さい。出来ます!

 大丈夫です!!」


 あたしはちょっと安心した。イリルはやっぱり、イリルだった。


 だって、こんな状況でそんな恋の空気の読めない発言をするなんて、イリル以外の何者でもないもん。

 まったく、この相棒は本当に、恋というか乙女心が分かっていないのだから。

 やっぱり、この戦いが終わったら、あたしと愛理子でみっちり調教……じゃくて、教育してあげないと駄目ね。

 そうやって未来の予定を一つ決めたあたしは、加速を止め地面に着地した。

 でも、これって慣性の法則って言うだって、地面に降りてもそれまでの加速度は無くなる訳じゃなく、あたしは靴を焦がしながら地面の上を滑っていく。


「へ? 定香さん 何を?」


 イリルが間抜けな声を上げるけど、いつもの如く無視。

 あたしは左の羽根をなんとか動かして直進運動を無理矢理回転運動に変えた。

 そして、ハンマー投げの選手よろしくイリスを握っている手を真っ直ぐに伸ばす。


「イリル。あんた、相変わらず、分かってないわ。

 愛理子が救わなくちゃならないのは、次元とか世界とかそんなモンじゃないのよ。

 分かっている? あたし達はただ大好きな人を救いたい、ただそれだけなの。

 そのために、次元やら世界やらと言うのを守らなくちゃいけないなら、いくらでも守ってやるわ。

 でもね、そんなのは愛する人に比べたら、二の次なのよ!」

「つまり、どういう事ですか? 定香さん?」


 生存本能が働いたのか、イリルのトーンが下がったけど、あたしはやっぱり無視。

 あたしの相棒なら、しっかり働きなさいよ。


「つまり、あたしは次元を斬る。

 そして、愛理子は近衛乱を救う。

 残った、ラケシスとかいう訳の分からないものは、イリル、あんたが、どうにかしなさい!!」


 そして、あたしはイリスの手を離した。



「いけえええええええええええええ!!」



 円盤よろしく、気持ちいいぐらいに回り標的めがけて飛んでいくイリル。

 うん、自分というのもアレだけど、惚れ惚れする回転ぷりだわ。

 きっとイリルはいつものように叫んでいると思うけど、あたしは聞く耳持たない。

 あ、もしかしたら、気絶してるかも知れないけど。

 グルグルと回転を続けるイリルの標準は狂ってない。

 あたしの相棒は見事、黒蘭色の彼が持っていた銀色の石に当たり、標的を明後日の方向へはじき飛ばした。


 よっし。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

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