M-37:旅立ち
M-37:旅立ち
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あれからあたしは四日四晩、寝込んだ。
本当は今すぐ、お兄ちゃんの想いを届けたいってあたしの心は弾け続けていたけど、シリアル・アリスとの激闘で満身創痍のこの身体は想いだけではどうしようもならないぐらいに疲弊していた。
イリルが言うには、あたしはベットの中、お兄ちゃんの想いの結晶であるアトロポスを握りしめながら、二日間は死体みたいに眠り続けていたみたいだから、相当なモノだったみたい。
我ながら、無茶なことをしたと思うけど、後悔は全くない。
だって、愛理子の想いを届けることが出来から。
だから、次はお兄ちゃんの想いを届ける番なんだ。
「お兄ちゃん……」
答えはもちろん返ってこない。
お兄ちゃんのいなくなったこの家は、あたし一人で静かすぎて、広すぎて、辛すぎて、悲しすぎる。
きっとあたし一人なら、耐えられなかったかもしれない。
でも、空気の読めない相棒と、同じ想いを秘めた仲間があたしにはいる。
あたしはアトロポスを握りしめ、ベットから起き上がり、部屋を出た。
外には、あたしの相棒と仲間がいた。
「定香さん、自分的にはもう少し休まれていた方がよろしいかと……。
なんせ、これから次元を飛び越え、フェイトが一つアトロポスを使うかも知れないんですよ。万全の体調でも相当な負担なのに、病み上がりの今の状態だと………」
「何言ってるのよ、あんたは。分かってるんでしょう。
どうも、フェイトが一つクロートが起動したみたいじゃない。それなら、今こそ、弾ける想いを届ける、あたしの出番じゃないのよ。
あたしは必ず、届けてみせるわ、お兄ちゃんのこの想いを」
「イリルさん、あなたも定香ちゃんの相棒なら言っても無駄だって事ぐらい分かっているでしょう。
大丈夫ですわ。定香ちゃんのフォローはこのわたしがちゃんとしますわ。この一件の原因はあたしにもありますし、その罪滅ぼし………」
「ストップぅ! 愛理子。
あたしは前にも言ったわよね。あたしは愛理子を恨んでなんか無いし、愛理子にはそんな想いで戦って欲しくないわ。
愛理子はあたしと一緒で、実の兄に恋した者同士、仲間なんでしょう。
あたし達は哀れだけど、だからこそ幸せになるのよ。
あたしと愛理子の二人の想いと、お兄ちゃんと近衛蘭の二人の想いで、ね」
「ええ、そうでしたわね。ごめんなさいね、定香ちゃん。どうも、わたしは少し弱気になっていたようですわ」
愛理子は勇気を持って笑った。
だから、あたしも勇気を持って笑った。
正直、これからの事を考えると、不安らや恐怖やらで押しつぶされそうになるけど、あたしの左手には相棒のイリル、右手にはお兄ちゃんの想いの結晶であるアトロポス、目の前には”実のお兄ちゃんを愛してしまいました同盟”の会員番号2番である愛理子がいる。
「大丈夫、きっと何とかなる。ううん、違うわね、あたし達の想いで、何とかしてやるのよ!!」
あたしの想いにイリルと愛理子は頷いてくれた。
それでは、行きますか。
「「届けるわ、二人の想い オーバー ダブル キュア ハート」」
紫色と桜色と、そして青銅色と黒蘭色の光が繭となってあたしと愛理子、二人の身体を包み込んで、そして、
「「スパーク!!」」
想いが弾けた。
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