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M-34:決着

M-34:決着


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 彼女の想いが次元の壁を越え、数多にある次元に伝わっていくのを確認した瞬間、あたしは地面に仰向けに倒れ込んだ。

 正直、限界。

 多分、24時間100m走を連続でしたってこんなにはならないってぐらい、心臓とか肺とか血液とかが大暴れしている。

 呼吸一つするのも臆測で、肺を膨らますとそれだけで胸に痛みが走るけど、息をしないことには死んでしまう。

 あたしは苦悶の表情を浮かべながら酸素を求め続けた。

 一体どれぐらいそうしていたのだろうか。

 この時間の止まった世界で、時間感覚なんてきっと一発目のチェリー・ムーンライトを喰らった時点で吹っ飛んでしまったので、全く分からない。

 やっと喋れるぐらいには呼吸が落ち着いた所で、視界が少しずつ回復してきた。

 老眼のようにピントの合っていなかった焦点が結ばれていき、そこには桜色の魔法天使があたしを見下ろしていた。

「あなたは、何をいたしましたの?」

「そっりゃ、はぁああ。あなたも感じたでしょう。すぅぅぅ。あなたの想いを、近衛蘭に届けたのよ」

「何を言っていますの。あの人はもう死んでしまったのですわ!」

「分からないよ。もしかしたら、逆にクレデターを取り込んで、はああ、生きているかもしれない。たぁぁぁ。だから、待ってみようよ。彼からの返事を、ね」

 あたしは桜愛理子にニッコリと笑いかけた。

 彼女はどうしたらよいのか分からないという表情を浮かべて、あたしからわざと視線を外した。


「あなたは、本当に哀れですわ。でも、やっぱり本当に、それ以上に幸せそうですわ。あたなは蘭さんから返事が戻ってくると、本気で信じているのですか?」

「信じてはないよ、願ってるの。そして、想っているだけ。だって、あたしは魔法天使だもん」


 ため息が聞こえた。

 でも、あたしは、桜愛理子の頬に小さく笑みが浮かんでいるのを見逃さなかった。

 その優しい笑顔は、あたしが彼女の想い出の世界で見た、近衛蘭に恋している頃の桜愛理子の表情だった。


「もう一度、言わせて頂きます。あなたは、真の哀れ者です。でも、それ故に真の幸せ者なのでしょうね。

 あなたが魔法天使というのなら、わたしも又、魔法天使ですわ。それなら、わたしも想うことにします。わたしとあなたの想いがあの人に届いてくれることを」


 そう言って、桜愛理子はあたしのすぐ側に腰を下ろした。

 あたしも出来れば、起き上がって彼女と真っ正面から向き合いたかったけど、まだ身体は全然回復してないみたい。

 まだ起き上がれない。

 あたしは仰向けのまま、愛理子はしゃがみ込んだまま、視線を合わせ、共に含みのある感満載の笑顔を浮かべるとそれから先は二人とも止まらなかった。


 あたしはお兄ちゃんの事を、愛理子は近衛蘭の事を、相変わらず空気の読めないイリルがげっそりとするぐらい語り合い始めた。


 お兄ちゃんのことを誰かに話すのが楽しいのは、いつものことだけど、愛理子の話を聞いているのも凄くまるで自分のことのように楽しかった。

 

 あたし達は語り続けた。


 まるでそうすることで、想い続けても消えることのない不安を隠そうとするかのように、互いの愛する人の事を語り合っていた。


 

 そして、ついに、その時がやって来た。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


しまった。投稿話数、1話突飛ばしてしまった。

すみませんでした。m(_ _)m

正規話数に変更します。

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