6-2:ようこそメイド喫茶へ
6-2:ようこそメイド喫茶へ
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「お帰りなさいませ、ご主人様!」
「ッシャ?」
扉の先に待ちかまえていた光景にティーカは言葉を失った。
訳が分からず、流誠の方を仰ぎ見るも、彼も予想以上の光景に苦笑いを浮かべることしかできていなかった。
「あ~、先生だぁ。やった~、本当に来てくれたんだね。小歌、嬉しい」
メイド達の中からよく知った顔が現れた。
いつものごとくティーカが不機嫌顔になるが、入り口で突っ立ていては迷惑なので、小歌につれられ取りあえず、席に着く。
「お帰りなせいませ、ご主人様。お飲物は何に致しますか? 小歌的にはメイドさん手作りスペシャルジュースがお勧めですよ。もう、小歌、先生のために奮発しちゃうからね」
「メイド服を着た人から先生なんて呼ばれると、すごく微妙な気分になってしまうから、出来れば、それは辞めてほしいな」
「あ、ごめん、先生。そうだよね、小歌は今、お仕事中だから、先生じゃなくてご主人様なんだよね。
申し訳ございません、ご主人様。でも、ちょっとは興奮しました?」
意図的に胸を前に押し出しながら、メイド服を着た小歌が尋ねてくる。
ティーカの頭に青い筋がいくつか浮き上がってきている。
これ以上、小歌がここにいると人災が発生してしまうだろう。
流誠は適当にオーダーをして、ひとまず小歌を下がらせる。
が、小歌はあろう事か帰り際に投げキスをしてきたのだ。我慢の限界だった。
「シャアア。あの女、人のナイトに向ってなんて破廉恥な事してくれるのよ!」
「ティーカ、人前だよ」
「そんな事、あたしの知ったことじゃないわよ。
決めたわ、今度あの淫乱女がやって来たら、あの可愛い服を全部溶かしてやるわ」
「ティーカ。落ち着いて、落ち着いて」
「これが落ち着いていられるかって言うのよ!」
そうこうして、ティーカと流誠、二人が小声で痴話喧嘩をしていると、特性ドリンクとオムレツをお盆に載せた小歌が戻ってきてしまった。
「ねえ、そこの発情女。人のナイトに手出した意味分かってるんでしょうね?」
「うん? ティーカちゃん何怒ってるの?」
この期に及んでもしらを切る小歌にティーカは飛びかかった。
が、しかし、小歌の差し出したグラスに制される。
「ほら、怒るとせっかくの綺麗な顔立ちが台無しだよ。これでも飲んで、リラックス。
小歌特製激甘ドリンク。
多分、ティーカちゃんのお口には合うと思うよ。ほらほら、騙されたと思って、ぐいっと、ね」
小歌の口車に乗るのは癪だったが、確かに生クリームが万遍なく乗っているこの飲み物は魅力的だった。
結局、誘惑に負け、小歌特製激甘ドリンクに口を付けてみる。
「あら、美味しい」
「でしょう。これって美味しいよね。もう、みんなに進めるんだけど、誰も、この味の素晴らしさを理解してくれないんだよね」
「生クリームに、黒砂糖、蜂蜜。ベースはカルピスって所ね。後、この甘みは……」
「うんうん。その通りだよ。わああ、分かってくれて、小歌感激」
なにやら、変なところで意気投合したらしい。
ティーカと小歌はともて常人の舌では耐えられない味覚の話で盛り上がっていく。
流誠は一目、小歌特製激甘ドリンクを見たが、もうそれだけで口中に甘みが広がり、胃が重くなるのだった。
太るってレベルじゃないだろう、これは。
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