33-9:かしまし
33-9:かしまし
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「なんだっと!!!!!!!」
桜色の廊下にリリシアの叫び声が響き渡った。
普段は一言も喋らず、親しい友人にのみ口を開くリリシアが叫ぶなんて玉露はともかく鳴恵も始めての出来事だった。
それ程までに、鳴恵の取った行動はリリシアにとって信じられない行為だったのだ。
「鳴恵、汝はどのようにして津樹丸殿を復活させたのか気になっていたが、なんだ。ことをかいて、クロートと引き替えに、サクラ・アリスと取引をしただと。
鳴恵、愚か者、愚か者、愚か者、愚か者、この大虚け!!!」
リリシアの怒りは収まらない。
下手をすれば次元が消滅するかも知れないMSデバイサーをみすみす渡してしまったのだから怒るのは当然であるが、鳴恵はこれといって反省した様子を見せていない。
「分かってるって。自分がどれだけ馬鹿なことしているかぐらいは。だから、こうしてクロートを止めに行こうとしているんだろう」
「分かっておらぬ。分かっておるなら、最初からそんな取引などしないわ。全く、妾達がどれほど汝のことを心配したのだと思っているのだ。なんか心配してかなり損した気分であるぞ」
「あれ、リリ。そんなにオレの事心配してくれたの? なんか嬉しいぜ」
時間はあまり残されていない。
駆けながら、鳴恵は隣を走るリリシアを見た。
その顔はもう、これでもかと言うぐらいに赤くなっていた。
「べ、別に、別に妾は、その、鳴恵がどうたのこうだという訳ではない。ただ、あれだ、妾と鳴恵は友達であるからな」
視線を鳴恵から逸らしながら小声でぼそぼそと呟くリリシアは、その容姿と相まって愛らしかった。
なんか時間があったら思わず抱きしめたいぐらいだった。
「うん。リリシアも凄く不安そうだった。でも、リリシアは僕なんかと違って凄く鳴恵のこと信じていたから、全然そんなの顔には出していなかったけど」
津樹丸を握りしめながら、玉露がフォローを入れてきた。
玉露からしてみればそれはあり前の事を言ったに過ぎなかったのだが、リリシアにはそうではなかったらしい。
「うるさい!! かしましい!!! 恥ずかしいわ!! お主ら、そんなに妾をおもちゃにして楽しいか!!」
「うん、オレはもの凄く、楽しいぜ」
「僕、友達をおもちゃになんかしないよ」
リリシアの叫びに、一人は確信犯で、一人は天然で、それぞれの素直な心の中を返してきた。
既に200年分ぐらい叫んだような気がするリリシアは、大きく息を吸い込んだ。
この声は毒である故、誰に聞かれるか分からない。
こんな限られた人間しかいない次元でもない限りは叫ぶことなんて出来ない。
だから、この空間を利用して、心の内を思いの限り、叫び尽くすのだ。
「鳴恵、玉露、この愚か者共が!!!」
かしましの三人は、笑い合い、語り合い、時には叫び合い、最終決戦の場へ向かっていく。
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