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33-7:双花両斬

33-7:双花両斬


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「すげぇな」

 玉露と鉄鬼兵との戦いをそれ以外の言葉で表現できない自分が少し情けなかった。

 しかし、鳴恵の少ない語彙ではそれぐらいしか表現できなかった。

「なんだ、その感想は。少なくとも、美しいとは言えないのか。しかし、確かに今の玉露には余計な形容詞は陳腐で不要ではあるな」

 リリシアが言うように緑の剣士が剣と舞う戦いには言葉は不要だった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 緑の舞に迷いは微塵もなかった。



 ただ、津樹丸を与えられたその時から積み重ねてきた鍛錬の日々を想いだし、腕から伝わる相棒の想いに鼓動を会わせ、武術を舞うよう剣技を繰り出していく。

 

 ある時は一点の曇りもない湖のように美しく、

 ある時はそびえ立つ大樹のように力強く、

 ある時は光り輝く雷のように素早く、

 いくつもの技を繰り出し、剣士は鉄鬼兵を追いつめていく。


 津樹丸が大きく振り落とされ、鉄鬼兵の剣と激しくぶつかり合った。

 激しく火花を放ちながらも玉露は自身の全体重を乗せ、津樹丸を鉄鬼兵の剣に押し込んでいく。

 

 鉄鬼兵の剣が桜色に輝いた。

 

 玉露は素早く相棒と目配せをする。

 蘇った相棒は薄く緑色に刀身を輝かせることで準備は万端であると伝える。


 ぶつかり合っている二人の剣がそれぞれ、桜色と緑色に光り輝いた。

 魔力と魔力のぶつかり合い。

 勝ったのは性能で勝る鉄鬼兵ではなく、想いで勝る玉露達であった。

 

 何故なら、玉露は独りではないから。

 彼女の腕の中には大切な相棒がいるから。


 玉露と津樹丸、二つの想いが、緑剣士の何よりの武器であり、誰にもコピー出来ない絆である。


 剣が魔力で弾かれ、鉄鬼兵の胸ががら空きにあった。

 好機を逃さず、津樹丸を鉄鬼兵の胸板に押し当てる。

 

 それだけでは鉄鬼兵の鎧を砕くことは出来ないが、玉露は剣士であると同時に魔法使いでもある。


 再び、津樹丸に想いを乗せ、玉露がもっとも得意とする魔法が発動された。




「双花両斬!」

『翠式連舞』




 そして、技の名の通り、翡翠の光が桜色の鎧に守られた鉄鬼兵を両断したのだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



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