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5-3:誓いの術式

5-3:誓いの術式


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 電車に揺られながら、手にした紫のカードを眺め続けている。

 明日は講師としての仕事があるので、山ごもりは取りあえず、終了だ。

 四日もサバイバルな生活をしてきた疲れが出たのか、ティーカは流誠の肩で安らかな寝息を立てている。

 流誠が優しく、彼女の髪を撫でてあげると、ティーカは気持ちよさそうな猫撫で声を上げる。

 山での突然のクレデターの来襲。

 四方を囲まれていたのは分かっていたが、頭上にいた二体には全く気づくことができなかった。

 玉露が剣先を上に向けたことで初めて、そこに敵がいるのを知ることができたのだ。

「所詮、ボクはこの程度だってことか」

 頭の中に術式を思い描く。

 術式は腕を伝わり、カードに刻まれる。


『I am Purple knight』


 必ず強くなってみせる。

 同じ過ちを二度と繰り返さないためにも、どんな敵からでも彼女を守り抜くためにも、もう大切な人から笑顔を奪いたくないから。

 

 刹那、白銀の髪の彼女を思い出したが、次の瞬間にはティーカが笑顔が見えていた。


『Battle for her smail』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 夜の繁華街を玉露は歩いていた。

 今宵も剣士は旅に出る。

 人知れず、闇法師から世界を救う旅路を歩く。

 在るのは一刀の相棒のみ。

 だが、それこそが緑剣士が唯一必要とする存在。

「久我流誠に、ティーカか」

 昼間、山奥で出会った妖精とそのナイトを思い出す。

 闇法師は日本だけでなく、世界各国に存在している。

 そのため、月島の一族のように闇法師を殲滅する者達は世界各国に存在している。

 そんな話は幼少の頃から、何度も聞いていたが、実際に出会うのは初めてだった。

「また会うことになるかな?」

 今は竹刀袋に収まった相棒に尋ねる。

 きっと相棒はその刀身に答えを刻んでくれているのだろうが、これだけの人混み中、真剣を出すわけにもいかない。

 闇法師を殺すのは月島の定め。

 別に闇法師に怨みが在るわけではない。

 人が害虫を駆除するかのように、玉露は闇法師を殺していく。

 だから、別の誰かが闇法師を殺したって一向にかまいはしない。

 ただ、同じ害虫駆除の力を持った者が現れても、その力を借りたいとは思わなかった。


 津樹丸がいてくれれば、それだけで、戦っていけるから。


「さあ、行こうか、津樹丸」

 人通りの途絶えた路地裏。

 奴らはここにいた。

 月下の光を浴びながら、玉露は津樹丸を解き放つ。

 緑の刀身が浮かばせていた文字は、玉露の想いでもあった。


 『以心伝心』


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


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