M-29:第八話
M-29:第八話
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あたしには変な確信があった。根拠も何もない勝手な想像だけど、わたしは確信していた。
ここが始まりなんだって。
あたしと桜愛理子、二人の魔法天使の物語はきっとここから始まったんだ。
二人の”サクラ・アリス”が出会ったこの時から………。
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「あなたは……誰?」
近衛蘭への自分の想いをぶつけた桜愛理子の前に、突然として現れた桜色の閃光。
まるですべてを狂気に染め上げるかのようなその光が消えた時、そこにはもう一人の彼女が立っていた。
そこには、満開の桜かのような笑顔だけがあった。
「乱君、乱君、乱く~~~ん。会いたかったよ、乱君」
その目元には涙さえ浮かべながら、もう一人の桜愛理子が近衛蘭に抱きついた。
あたしも桜愛理子も近衛蘭も誰もが状況を理解できていない中で、もう二度と離さないとばかりにもう一人の桜愛理子だけが泣きじゃくっていた。
不思議だった。
何で彼女は泣いているのにあんなにも幸せそうに見えるのだろうか。
そんなことあるわけ無いのに、あたしはこう思わずにはいられなかった。
”もしかして、あの二人は恋人だったのかな?”
「蘭さん………」
そして、桜愛理子もあたしと同じ事を想っていたようだ。
両手を口元に当てて信じられない物を見ているかのように何度も、何度も、何度も首を横に振っていた。
「乱君。もう、絶対に離れたりなんかしないよ。私、好きなんだもん、乱君の事、大好きなんだもん。だから、もうこの手を離したりなんかしないで」
あたしは言葉を無くした。
桜愛理子は言葉を詰まらせた、そして、近衛蘭は言葉を封じられた。
「っ!!」
もう一人の桜愛理子がその唇を近衛蘭に重ね会わせたのだ。
「いや、嘘、何コレ、私はここにいる。アレは私じゃない。
なのに、私じゃない私が、蘭さんと……キ、ス…。
何、何が起きているの。ねえ、コレは何。
私は、私は、私は、私はここ。蘭さん、私は、あなたの妹の私はここです!!」
爆発した。
自分と同じ容姿をした別人が、思い人と唇を重ね合わせた。
そんな現実を目の当たりにして、桜愛理子の想いはまさに咲き乱れる桜花のごとく弾けた。
想いは魔法の原動力。
強い想いは、強い魔法を導き出す。
だけど、この時の桜愛理子はまだ、魔法天使じゃない。
咲き乱れる想いを制御する術を持っていない。
「駄目!!」
あたしは届かない想いを叫び、桜愛理子を押さえ込もうと彼女に抱きついた。
でも、ここは桜の想いが作り出した、想い出の世界。
あたしの体は何も出来ず、桜愛理子の体をすり抜けていった。
不様に地面に倒れ込むあたし、その視線の先で、世界に亀裂が入り、黒い何かが蠢いていた。
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