32-7:共闘
32-7:共闘
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流誠は差し出された秋生の手を握り返さなかった。
彼はもう彼女を守る騎士ではない、彼はティーカを守る騎士である。
だから彼女の幻影ではなく、今確かに自分の肩にいるティーカの力を借りたかった。
右手をそっと肩に運び、そこにいるティーカを優しくそっと握りしめる。
「ティーカ。何処まで出来るか分からないけど、やってみるよ。ティーカの望む未来を、ボク独りじゃ作れないけど、小歌君や来名秋生、そしてティーカの力を借りて、作ってみせるよ」
その誓いを胸に久我流誠は立ち上がった。
そして、彼の方から、来名秋生に左手を差し出した。
「来名秋生。ボクはキミの言うように罪を償わなければならない。でも、その前にやらなければならないことが二つある。
一つはティーカの友人であるサクラ・アリスを止める事。そして、もう一つはティーカとボク達が笑っていける未来を見つけること。
もうボクに残された時間は少ないかも知れないけど、それでも許されるのなら、キミ達の力を借りたい。ボクは無力な騎士だから」
差し出された手を握り返す前に、秋生は笑ってしまった。
今の流誠の姿はまるで、乱や玉露に共闘を頼み込んだときの自分と重なり合ってしまったからだ。
そして、改めて痛感してしまった。自分と彼は似ていると。
「ちょっと、次元監視者。何笑っているのよ。あんた流誠を馬鹿にしているの!」
自身でも失礼な行為だとは思っていたため、秋生は素直に頭を下げた。
「すまぬ。少しばかり思うところがあった故な。失礼な事をしてしまった。だが、小職も流誠殿と同じ事を考えていた。
小職も無力故、よければ、お主の力を借りたい。何としてでも、次元の危機だけは救わねばならない故な」
そう言って、秋生は流誠の左腕を握り返した。
そして、そんな二人の手の上に雪のように真っ白な手が添えられた。
「ちょっと、先生にライナさん。小歌がいること忘れてません。小歌は先生もライナさんも二人ともラブで、二人のためになら体中何処でも差し出したって良いと思ってるんだから、二人が共闘するなら、もちろん小歌だって、手伝うんだから」
色々と誤解を招きそうな発言ではあったが、あえて流誠も秋生も突っ込みを入れなかった。
紫と赤と白の手が重なりあり、そして動き出した。
「では、流誠殿、早速ですまぬが、サクラ・アリスの居場所へ小職らを案内してはくれぬか。もう時間があまり残っていない故な」
秋生の言葉に流誠は確かに頷き、一人目の魔法使いは再び戦い始める。
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