5-2:これが差
5-2:これが差
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「シャア~~。意思を持ったMSデバイサーなんて、あたし初めて見たわよ」
津樹丸の周りを、もろ好奇心剥き出しに飛び回りながらティーカは感嘆した。
確かに、100年使われたMSデバイサーは意志を持つと言われている。
だが、MSデバイサーは魔法を使う上で必需品であり、MSデバイサーの性能が魔法使いのレベルに直接繋がる場合もある。
そのため、MSデバイサーは日々進歩を続け、次々と新製品が出回っているので、100年以上も使われるなんて、稀もいいところである。
だから、そんなのは迷信だと思っていた。
『旧式』
津樹丸が緑の刀身に文字を浮かび上がらせるが、確かにその通りだ。
これだけ旧式のMSデバイサーなら鑑定に出せばなかなかの値で取引が出来るだろうと思えるほど、津樹丸は旧型のMSデバイサーだ。
「津樹丸、そんなことはどうでもいいこと。津樹丸が古くたって、僕達には関係のないことだよ。津樹丸と一緒なら、僕はそれだけで戦えるんだから」
この旧式MSデバイサーで、九体の派生型クレデターを瞬刹したというのだから、この月島玉露という剣士は一体どれほどの才能を持っていると言うのだろうか。
「しかし、玉露さん。本当に駄目なのですか?」
「うん。僕は独りで十分だから、誰かの助けなんていらないよ」
流誠の再度の願いも玉露は首を縦に振らなかった。
玉露の強襲の後、互いにクレデター(闇法師)を倒す理由を語り、双方の事情を理解した上で、流誠は玉露に提案したのだ。
『一緒に、戦いませんか?』
しかし、津樹丸を唯一無二の相棒として、他の助けなど一切必要としない玉露は首を横に振ったのだった。
「あんた、一人より二人の方が何かと便利でしょう?」
「そうでもないよ。僕は今までだって、ずっと独りで戦ってきたんだから。それに、久我の強さの程だと、正直、僕にとっては足手まといにしかならないね」
自慢のナイトを侮辱され、顔を真っ赤に染めるティーカだが、正論だけに何も言い返せない。
「久我が闇法師と戦いたいというのなら、僕に止める権利はないよ。ティーカを守るのなら守ればいいと思う。だけど、それは僕と津樹丸には関係のない事だから」
そう言うと、玉露は津樹丸を鞘にしまった。
「ねえ、久我、一つ聞いても良い?」
「何を?」
「気づいている?」
「それって、この四方八方を取り囲んでいる奴らのことか?」
「やっぱり、久我はその程度でしかないんだね」
そして、流誠と玉露を取り囲むようにして、闇が躍り出、緑の一閃が煌めいた。
「双花両斬!」
『翠式連舞』
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