31-5: Road of Five
31-5: Road of Five
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妾と玉露、そして乱の三人は桜色の通路を駆けていた。
幸いな事に一本道であるため、妾らは迷うことなく駆けている。
通路の先に扉が見えた。
罠か? と訝るも玉露と乱を少し離して、妾は扉を開けた。
何も起こらなかった。
扉の先は妾らがこの次元にたどり着いた場所のように、広大なスペースを有した空間であった。
違いは、そこには桜色のクレデターは一切おらず、代わりに五体の薄桜色の装甲に体を包み込んだ兵士がいることだろう。
「鉄鬼兵か」
乱が舌打ちした。
全く妾も舌打ちの一つでもしたい気分だが、サクラの次元にやって来たのだ。
鉄鬼兵が出てくることはもちろん想定の範囲内である。
むしろ、先の空間で気配を感じていた久我流誠の方が予想外の出来事である。
妾は乱の袖を掴み、彼の瞳に語りかけた。
全く、誰にも隔たり無く喋れないと言うのはこう言うときに不便で仕方ない。
だが、乱も少なからず妾と共に過ごした時間があるため、妾が何と言いたいか分かってくれたようだ。
「良いのか?」
乱の問い返しに妾は”愚か者”と一瞥して、鉄鬼兵の方を見た。
もうこれ以上あやつと語る事はない。鉄鬼兵は五体、その全てが先の戦いで見た鉄鬼兵であった。
妾は心の中で呪文を呟く、妾に魔法が発動した事を感じ取った鉄鬼兵が身構えるが、残念な事に妾は囮に過ぎぬ。
『Drak Wall』
妾ではなく乱の魔法が発動し、世界が漆黒の闇に染まり、全ての視界を取り除く。
その間に妾は魔法を完成させ、右手に水で作り上げた聖剣を携えた。
闇は一分ほど立つと自然に消滅した。
そして、闇に紛れて、この場から近衛乱が消えていた。
サクラ・アリスの元へたどり着くために、彼だけは前に駆け続ける。
「玉露、お主はコレを使え」
乱がいなくなったことで、喋らない意味が無くなった妾は、想いを言葉に変えて空気に乗せる。
「リリシア……。コレは………」
「妾の作り出した剣だ。妾から離れてもこの程度の空間の距離なら消滅することはないから、心おきなく使え。
お主はMSデバイサーを無くしたが、あのMSデバイサーと共に培ってきた剣技まで無くした訳ではないのだろう。
だから、妾と共に戦え、玉露」
本当は”共に戦ってくれ”と言いたいのだが、そんな恥ずかしいことは小夜子にしか言えないからついつい命令形になってしまう。
全く、妾もまだまだ未熟である。
「リリシア……。うん、僕の剣で絶対にリリシアを助けて、鳴恵を救い出す」
かつて妾を狩ろうとしていた頃と同じ剣士の瞳を取り戻して玉露が宣言する。
水の聖剣を構えた玉露はもう心配ないだろう。
妾は次の呪文を唱え始める。
鉄鬼兵は五体、こちらは妾と玉露の二人。
分の悪い戦いである。
勝ち目がない訳ではないが、後方にいる秋生が合流でも知れくれない限りは、負けるであろう。
”でも、オレはこんなんじゃ、諦めないぜ”
不意に鳴恵の声が聞こえてきた。
全くもって、確かにあいつはこんな状況でも笑ってそう宣言して、なんとか道を作り出してしまうだろう。
「愚か者めが。だが、そんな鳴恵に期待してしまう、妾もまた愚か者であるな」
そう呟き、妾は氷の狼を召還した。
待っていろ、鳴恵。
こいつら鉄鬼兵を片づけたら、必ずお前を助け出してやるからな。
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