31-4: Road of Four
31-4: Road of Four
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小職の目の前に紫の色の妖精を肩に乗せた、一人の騎士が立っている。
ティーカ・フィルポーズを追う今回の任務で何度と無く対峙してきた騎士であるが、きっとこれが彼と対峙する最後の戦いになるであろう。
小職はコイン型MSデバイサーを弾いた。
宙を舞い、拳に戻ってきたソレは、裏を向いていた。
「久我流誠、無駄であろうが、最後にもう一度聞いておく。引く気はないのだな」
「来名秋生、その答えは言うまでもないって知っているだろう」
久我流誠がポケットから紫色の星が刻まれたカードを取り出し、小職に狙いを定めた。
小職もコイン型MSデバイサーを久我流誠に向ける。
そして、静かな時間が流れた。
小職も、久我流誠も、ティーカ・フィルポーズも、小歌殿も誰も何も語らない、静かな静寂が空間を支配していた。
久我流誠の目的は恐らく、小職をこの場に止めておくことだろう。
だから、この場を立ち去るあの三人には目もくれなかった。
不意に、彼女の勝ち誇った声が聞こえてきたような気がした。
自分の心が作り出した幻聴だと分かっているが、その言葉に自嘲せざるを得なかった。
『ほら、藍の言った通りでしょう。あなたは一人じゃない。一人じゃ、あなたはここで足止め喰らって何も出来ないままだったかもしれないわよ。だから、もっと肩の力抜きなさい』
その通りだ。
小職が一人でこの世界に乗り込んでいたのなら、こうして久我流誠と対峙している間は何も出来なかった。
しかし、小職がこうして立ち止まっている間にも、あの三人は前に進んでいる。
サクラ・アリスの野望を止めるべく前に進んでくれている。
そう考えると、自然と肩の力が抜けた。
小職はコイン型MSデバイサーの狙いから久我流誠を外した。
「何のまねだ。来名秋生?」
「いや、何。確かに時間はないが、焦りは禁物だなと自分を諫めた所だ。小職は一人でここに来た訳ではない故な」
久我流誠が眉をひそめる。
小職自身も自分の行動に眉をひそめたくなる。
全く、彼女と出会って以降の小職は何かが根本的におかしくなっている。
「なあ、久我流誠。お主は一人か?」
小職の問いかけに、久我流誠は迷うことなく首を横に振った。
「いいや、ボクには守るべき姫であるティーカがいる。だから、ボクは独りじゃない」
「そうだな。小職ももう、一人ではない」
そこで小職はもう一度、コインを弾いた。
今度は表になって拳の中に戻ってきた。
「小職は一人じゃない。何をこんなに悟っているのか、小職自身も知らないが、きっとあいつらが小職を助けてくれているからさ」
彼女の言葉を、自分の言葉として言い直す。
小職は今、仲間に助けられている。
だから、小職も仲間を助けるべく、今、ここで戦うのだ。
「それ故な、小職は戦っているのだ」
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