31-3: Road of Three
31-3: Road of Three
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「ここがサクラ・アリスの世界?」
小歌達が次元の裂け目を通ると、そこは薄桜色の壁に囲まれた空間だった。
かなり広い空間で、野球グランドぐらいはありそうだ。
見渡す限り、ここにあの桜色の光の中に閉じこもっていた女性も久我先生もティーカちゃんもいない。
その代わり、この野球グランドほどの空間には隙間無く桜色のクレデターが居座っていた。
「これは多いな。世界的な人気バンドでもない限り、こんな人数動員できないぜ」
乱さんが自嘲ともとれる笑みを浮かべて、ポケットから漆黒のカードを取り出した。
小歌はそんな乱さんの手を制して、笑顔で言ってあげた。
「駄目だよ、乱さん。乱さんのMSデバイサー、もう残り少ないんでしょう。なら、こんな所で使っちゃ駄目。
乱さんはサクラ・アリスに会うんでしょう。なら、ここはMSデバイサーに制限のない小歌達にまかせて。
ね、ライナさん。リリシアちゃん」
小歌はそう言って、二人の同意を得た。
ここにはもう一人、玉露君もいるけど、彼はMSデバイサーを無くしていて戦力にならないから今は除外。
「確かに、所詮はクレデターに過ぎぬ。ここは小職と小歌殿が残れば、問題ないだろう。
近衛乱、リリシア、玉露殿は先に前に進んでくれ。事態は一刻を争うかも知れぬ故な」
ライナさんはそう言って、コイン型MSデバイサーを指で弾いた。
ってことは何。
小歌はライナさんと二人きっりで戦えるの。
やっったぁぁぁ。
と小歌は心の中で両手でガッツポーズを上げて歓喜狂乱する。
さあ。
となるとまずは三人には早々とここから退場して貰わないとね。
フィィィィィィ
小歌は雪色の笛を吹き、近衛乱、リリシアちゃん、玉露君に魔法をかける。
三人の体は雪色の結界に守られた。
「さあ、みんな早く行った。小歌が魔法かけたから、これで思う存分強行突破できるよね」
三人は互いの顔を見合わせて、頷くと、桜色のクレデターの中を一気に走り抜けていった。
もちろんクレデターは三人を止めようと迫るけど、小歌の魔法はそんなに柔じゃないし、三人をサポートする形で秋生さんの魔法がクレデターを焼き尽くす。
そして、三人は無事にこのクレデターに占拠されていた場所を抜け出した。
「三人とも、行きましたね。ライナさん」
「そうだな。小歌殿すまぬ。小生にも、防御魔法を頼む。それと、お主も自身に結界を張ってくれ」
「は、はい」
フィィィィィィ
ライナさんに面と向かってお願いされただけで、小歌の心臓は自然と早くなる。
緊張して思わず雪色の笛を落としそうになったけど、なんとかライナさんと自分に防御結界を張る。
そして、小歌は最高に格好いいライナさんを目撃した。
やばいよ。
今までも本気だけど、もう歯止めが利かないぐらいにライナさんの事好きになりそうだよ。
『Flame the staicase heaven』
それは劫火だった。
語彙力のない小歌にはこれ以上の表現は思いつかない。
紅くて、美しくて、力強い炎がここにいる桜色のクレデターを一瞬で焼き尽くした。
その、まさに天使を前にしたかのような神秘的な光景に小歌は立ちつくした。
劫火が消えた。
この場に残っているのは、小歌とライナさんと、
そして、きっと最初からそこにいたであろう、彼と彼女だった。
「先生、ティーカちゃん」
小歌は呟く。
そして、どうして次元監視者であるライナさんが、本当は誰よりもサクラ・アリスの元へ行かなくてはならない彼が、ここに残った理由が分かった。
「小歌は幸多。そして、幸多も小歌なんだ」
小歌は自分に言い聞かせる。
幸多として、そして小歌としても今からここで起きる出来事に後悔しない決断を下せるように自分に告げた。
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