27-2:静かな決意
27-2:静かな決意
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「月島玉露、悪魔。
なるほど、MSデバイサーではなく魔法使いを直接奪ったという訳か。月島玉露という器をつかい、クレデターが悪魔に進化した………、卑怯者が」
闇の中から現れた闇緑剣士を見て、乱が状況をある程度理解した。
「そうよ。一目でそこまで分かるった、お前もなかなかの使い手だな。
月島の人間ではないようだし、玉露の記憶にもお前の事はほとんど残っていないが、月島の人間を全滅させた後は、お前の体を使ってやるのも面白そうだな」
闇緑剣士は卑下した笑いを浮べる。
「悪いな。私の体は、あいつ一人だけのモノだ」
ポケットからプロミス・オブ・ASを取り出し、臨戦態勢を取る。
小歌は今一状況が分かっていないようだが、問題はリリシアである。
この場で乱はあくまで部外者でしかない。
友の体を奪われたリリシアは果たしてどのような決断を下すか。
乱はリリシアが動くのを静かに待ち続けたが、青人形が動くより先に闇緑剣士が動いた。
「ここで張ってりゃ、月島の一族がやってくるかと思ったが、まあいい。
お前ら、練習台だ。
この月島玉露の力を得た、オレがどれほどのモノか、その身で試させてもらうぞ!」
闇緑剣士の右手に緑の刀身が生み出された。
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玉露がクレデターに取り憑かれ、悪魔となった。
完全に意識をクレデターに乗っ取られている。
教会に属して、悪魔退治だって何度も経験してきた。
そう、その全てが退治であった。
クレデターに憑かれた初期状態ならまだ憑依者からクレデターを取り除くことも出来るのだが、意識を完全にクレデターに支配され、悪魔に成った者からクレデターだけを取り除く術を教会もリリシアも知らない。
大切な友が悪魔になった。
そんな現実を握りつぶしたくて、拳を握りしめるが現実は変わらない。
玉露の体を持ち、玉露の顔をした悪魔が嬉々として吼えている。
もう一度、拳を握りしめた。
これはリリシアの意思。
人形として生まれた自分は常に人間を看取る側なのだ。
これまでだって何度も人間の死に立ち会ってきた。これもそれと同じ事である。
(イヤ、違うな、小夜子)
リリシアは心の中で、この世界でもっとも大好きな彼女を思い出した。
彼女はもし、自分の娘が悪魔になってしまったらどうするのだろうか?
答えはすぐに出てくた。彼女はきっとこう言って笑うのだ。
『だって、鳴恵ちゃんは私の娘なんですから』
そして、最後まで娘の名を呼び続けるのだろう。
終わりは何時だってやって来る。
でも、そこで終わるか、終わらせないか、決めるのは自分自身だ。
「玉露、汝は妾の友であるのだぞ」
乱と小歌に聞こえないように小声で呟き、リリシアはその青の瞳で友を見た。
悪魔となった友を救う術はしらない。
だが、友を見殺しにする術もまたリリシアは知らなかった。
闇緑剣士の腕に緑の刀身が生み出される。
呼応して、リリシアの右手に青の聖剣が生み出される。
迷いはない。
何としても、あの不器用な友を救うのだ!
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