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27-2:静かな決意

27-2:静かな決意


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「月島玉露、悪魔。

 なるほど、MSデバイサーではなく魔法使いを直接奪ったという訳か。月島玉露という器をつかい、クレデターが悪魔に進化した………、卑怯者が」

 闇の中から現れた闇緑剣士を見て、乱が状況をある程度理解した。

「そうよ。一目でそこまで分かるった、お前もなかなかの使い手だな。

 月島の人間ではないようだし、玉露の記憶にもお前の事はほとんど残っていないが、月島の人間を全滅させた後は、お前の体を使ってやるのも面白そうだな」

 闇緑剣士は卑下した笑いを浮べる。

「悪いな。私の体は、あいつ一人だけのモノだ」

 ポケットからプロミス・オブ・ASを取り出し、臨戦態勢を取る。

 小歌は今一状況が分かっていないようだが、問題はリリシアである。

 この場で乱はあくまで部外者でしかない。

 友の体を奪われたリリシアは果たしてどのような決断を下すか。

 乱はリリシアが動くのを静かに待ち続けたが、青人形が動くより先に闇緑剣士が動いた。

「ここで張ってりゃ、月島の一族がやってくるかと思ったが、まあいい。

 お前ら、練習台だ。

 この月島玉露の力を得た、オレがどれほどのモノか、その身で試させてもらうぞ!」

 闇緑剣士の右手に緑の刀身が生み出された。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 玉露がクレデターに取り憑かれ、悪魔となった。

 完全に意識をクレデターに乗っ取られている。

 教会に属して、悪魔退治だって何度も経験してきた。

 

 そう、その全てが退治であった。


 クレデターに憑かれた初期状態ならまだ憑依者からクレデターを取り除くことも出来るのだが、意識を完全にクレデターに支配され、悪魔に成った者からクレデターだけを取り除く術を教会もリリシアも知らない。


 大切な友が悪魔になった。


 そんな現実を握りつぶしたくて、拳を握りしめるが現実は変わらない。

 玉露の体を持ち、玉露の顔をした悪魔が嬉々として吼えている。

 もう一度、拳を握りしめた。

 これはリリシアの意思。

 人形として生まれた自分は常に人間を看取る側なのだ。

 これまでだって何度も人間の死に立ち会ってきた。これもそれと同じ事である。


(イヤ、違うな、小夜子)


 リリシアは心の中で、この世界でもっとも大好きな彼女を思い出した。

 彼女はもし、自分の娘が悪魔になってしまったらどうするのだろうか?

 答えはすぐに出てくた。彼女はきっとこう言って笑うのだ。


『だって、鳴恵ちゃんは私の娘なんですから』


 そして、最後まで娘の名を呼び続けるのだろう。

 終わりは何時だってやって来る。


 でも、そこで終わるか、終わらせないか、決めるのは自分自身だ。


「玉露、汝は妾の友であるのだぞ」


 乱と小歌に聞こえないように小声で呟き、リリシアはその青の瞳で友を見た。


 悪魔となった友を救う術はしらない。

 

 だが、友を見殺しにする術もまたリリシアは知らなかった。


 闇緑剣士の腕に緑の刀身が生み出される。

 呼応して、リリシアの右手に青の聖剣が生み出される。

 迷いはない。


 何としても、あの不器用な友を救うのだ!


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


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