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27-1:狂乱の部屋

27-1:狂乱の部屋


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ああ、乱さんって悪人なんだ。こう言うのって不法侵入って言うんだよ」

 玄関前に立つゴスロリ姿の小歌が、ドアノブに専用工具を差し込んでいる乱を指さして笑っている。

 ここは月島玉露の家である。

 何故、乱が乱がこのようなことをしているかというと、リリシアは迷わずここへやって来て、中に玉露がいないことを確認すると、有無を言わせない瞳で乱を睨み、顎でドアノブを差したのだった。

 それだけで、リリシアの意思は全て乱に伝わった。

 元泥棒家業に手を出していた乱にしてみれば、この手の仕事はさほど難しい作業ではない。

 が、気がつけばリリシアに良いように使われている自分に自嘲しつつ、乱は錠を外すべく作業に取りかかった。

 ちなみに、小歌は見張りをすることもなく、興味津々な瞳で乱の作業を一心不乱に見ている。

「開いたぞ」

 ガッチャという音が聞こえ、閉ざされていた扉が開かれた。

 リリシアは急いで、ドアを開け、中へ入るが、やはりそこに玉露はいなかった。

 これは予想通り。


 しかし、予想外だったのは、その内装であった。


「何これ………」

 小歌が思わず両手を口にあて、絶句する。

「よほど苦しんでいたという事か」

 乱が床に散らばったガラス片を取り上げ呟いた。

 玉露の部屋は何と形容すればいのだろうか。

 まるでここで戦争があったかのように壊れ、荒れ、砕かれていた。

 とても人が住むような環境ではない。

 この部屋を見ているだけで、本来この部屋にあった恐怖の残り香が胸を締め付け、吐き気を催してくる。

 そんな中、リリシアは傷だらけの人形を見つけた。

 リリシアの体ぐらいはありそうな大きな人形は見覚えがある。


 鳴恵と玉露と共に回った秋祭りで、玉露が輪投げで獲得した景品だった。


 柔らかそうだった毛並みは、垂れ落ち、よほど強い力で握りしめたのだろう。

 人形の至る所には玉露の手形が残っていた。

 そんな人形を優しく撫で、リリシアは心の中で友の名を呟いた。

「どうするの、リリシアちゃん。もう、ここには玉露君いないみたいだし。

 正直、小歌、ここ気味悪くて、気持ち悪いな」

「確かに、これだけ荒れていれば、どれが手がかりであるか識別するのも時間がかかると私も思う。

 ここは、別の線から玉露という剣士を追っていた方が得策だと考えるが?」

 小歌と乱が進言してくる。

 その通りだとリリシアも思ったが、しかし、彼女が動くことが出来なかった。


 鋭い瞳で小歌と乱を睨み付ける。


 小歌は訳が分からないという感じで首を傾げ、乱は小さく肩をすくめるだけだった。

 あの小歌という奴は実戦経験が少なく使い物にならないが、乱の方は少しは使えると言うことか。


 リリシアの青の瞳に呪文が刻まれる。


 魔法が発動し、空虚から突如、水で形成された狼が出現した。

 狼は主の意思に従い、目標めがけて突撃した。

 この部屋に入った瞬間から感じている視線と、体を嘗め回されるのと同様の嫌悪感。


 この部屋には悪魔が潜んでいる。


 リリシアは先制攻撃で悪魔に打って出るが、彼女の生み出した狼は悪魔の刃に両断されたのだった。

「ひどいな、お前。この体を探してここまで来たんだろう。なのに、いきなり攻撃なんて、本当に友達なのかよ。

 なあ、リリシア・イオ・リオン。無口なお人形さんよ」

 闇から姿を現した悪魔の姿を見て、リリシアは絶句せざるを得なかった。

 小歌も乱も目の前の状況が瞬時には理解できず、反応が遅れてしまう。


 闇から現れた闇緑色の悪魔、その姿は玉露と瓜二つであったからだ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



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