表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
154/246

25-5:運命に逆らえない黄金

25-5:運命に逆らえない黄金


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ティーカと流誠の部屋を出て、鳴恵は自分の牢獄へ戻ってきた。

 自分で鍵を開けて、まるで自分の家であるかのように牢屋に戻るのもおかしな感覚であるし、あの柔らかなベットにまだ眠りたい誘惑が無いわけではない。

 だが、鳴恵がこのサクラの居る次元に来た目的を全て果たした訳じゃない。

 休むのは全てが終わってからだ。

「全く、この厄介ごとが終わったら、絶対、リリと玉露と一緒に温泉に行って、楽しく休んでやる」

 愚痴であり、自分を勇気づける目標を吐きつつ、鳴恵は牢屋の中へ入っていた。

 牢屋の壁には鳴恵がこの次元に持ってきた津樹丸が立て掛けられている。

 玉露の相棒であった、MSデバイサーの残骸にはもう緑の輝きはない。

「玉露、お前はまだ苦しんでいるのか?」

 最後に見た玉露は津樹丸を失って茫然自失としていた。

 あれだけ強かった玉露が、いや強かった故にだろう、孤独に怯えていた。

 ”ここにいる”と鳴恵が呼びかけても答えは返ってこなかった。

 出来ることなら、今すぐにでも玉露のそばに駆け寄って、玉露が自分を取り戻すまで何度も呼び返してやりたい。


 だが、鳴恵が選んだのは別の道である。


「躊躇いは断ち切らないとな。それに玉露、お前は独りじゃない。

 オレが居るし、そして、リリもお前のそばにいる。だから、大丈夫だ」

 津樹丸を失った玉露が闇法師に憑かれた事実を知らぬ鳴恵であるが、彼女はきっと事実を知っていても同じとを言っただろう。

 

 彼女とリリと玉露は友人なのだ。

 

 その想いは、サクラをねじ伏せるほど強い。

 玉露が何であろうと彼女は躊躇わず玉露を友人と呼ぶだろう。

「さあて、サクラにかなり壁に叩き付けられたからな。壊れてなければ良いけど」

 そう言って鳴恵はポケットから黄色の箱を取り出した。

 リリシアがもしもの時にと渡してくれていたMSデバイサーである。

 鳴恵は魔力を持たない普通の人間である。

 MSデバイサーなど渡された所で普通なら使い道はないのだが、このタイプだけは違う。

「確か、これがスイッチだよな」

 リリシアが一度使っていた様子を思い出しながら、鳴恵は黄色い箱のボタンを一カ所押した。

 すると箱の上端が開き、砂嵐だけを映しだしたモニターが空中に投影された。

「あ~やっぱ駄目か。それとも繋がるのに時間が掛かるのか?」

 砂嵐しか映さないモニターを眺め、鳴恵は小さく首を傾げた。

 これは緊急通信用MSデバイサーであり、もしも所有者の魔力が尽きていても緊急連絡が行えるようにとMSデバイサー自体にある程度の魔力が充填されているのだ。

 そのため、魔力を持たない鳴恵でも、このMSデバイサーを使うことが出来ている。

 もっとも魔力の供給を行えないなら、MSデバイサーに充填されている魔力が尽きたら、それ以降は何も出来ないのだが。

 砂嵐の画面を見つめ続けながら、鳴恵は待ち続けた。

 MSデバイサーに溜められた魔力が尽きるのが先か、それともこの通信が繋がるのが先か。

 自分の力では何も変えられない運命を鳴恵は静かに待ち続けた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ