24-6:闇緑色
24-6:闇緑色
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「ああ、あっあああああああああああ!!」
玉露の絶頂が木霊する。
自らが真に孤独であると思い込んだ剣士の体に闇法師がとけ込んでいるのだ。
「あうううっっがあああ!!」
玉露の全てが闇法師に染め上げられている。
津樹丸と共に歩んできた記憶、津樹丸と共に磨き上げてきた技その全てが闇法師に盗まれ、蹂躙されていく。
「止めろ! 止めて! 津樹丸!!!」
玉露は再び手を差し伸べた。
今度は秋生に救いを求めたのではなく、ここにはいない彼女達を求めて、手を差し伸ばす。
「鳴恵、リリシアぁ」
しかしその手は糸の切れたマリオネットのように唐突に動きを止めた。
「クレデターに憑かれし魔力を持つ存在。
従来ならば、意志のないMSデバイサーを取り込むのだが、まさか魔術師そのものを取り込むとは……」
朱のコインを握りしめた秋生は、かつて月島玉露と呼ばれた剣士に驚愕の声をかけた。
「感謝してるぜ、次元監視者って奴。お前さんが、玉露の手を握りしめてくれなかったおかげで、やっとこいつの体を乗っ取ることが出来たのだからな」
玉露だった存在は、かつての面影を微塵も感じさせない尊大な声で言ってのけた。
今や、ここにいるのは月島玉露ではない、闇法師にその全てを上書きされた闇緑色の剣士だ。
「別に、小職は悪魔に礼を言われることなど何一つやって居らぬ。
あの場合、あれがもっとも次元を守るのに最適な手段であったと判断したまでだ。
そして、お主もまた次元を乱す存在である」
魔力はまだ復活していない。辛うじて一発の火球を生み出せる程度である。
先手必勝、相手に反撃を許す間もなく、秋生は朱のコインを闇緑剣士に突きつけた。
「へっ!!」
だが、そんな秋生の奇襲を闇緑剣士は鼻で笑い、刹那の間で、右手に緑色の魔力剣を生み出す。
意識は闇法師であるが、この体と技は長年剣士としての鍛錬を積んできた玉露のものである。
火球が形成されるよりも早く、闇緑剣士は魔力剣で、次元監視者を逆袈裟に斬りつけた。
「っか」
膨大な魔力をその体にあびた次元監視は数百ボルトの電流が流れ込んできたかのように体を痙攣させながら、その場に崩れ落ちた。
「はああ。技間違えっちまったな。本当なら、斬り殺してやりたがったが、まあ良い。
俺達の目的はこの事じゃなねえ。
待っていろよ、月島の野郎ども。お前達が俺達を狩るべく編み出した数多の技で、今度は俺達がお前らを狩ってやるからな!」
闇緑剣士は吼え、そしてかつて玉露だった悪魔は独り、深い闇の中へ消えていくのだった。
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