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23-6:凛々しき蒼

23-6:凛々しき蒼


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 リリシア・イオ・リオンは強かった。

「お~い。乱さん、生きてますの~~」

 床の上に大の字で倒れ伏せた近衛乱に向かって小歌が何処か楽しそうに語りかける。

「まあ、なんとかな。だが、情けないぜ。卑怯にも背後から不意打ちで攻めたというのに、何も出来ずに無惨に負けるとはな」

「それだけリリシアちゃんが強いって事だよ。なんて言ってもライナさんがパートナーに認めた人だからね」

 小歌の横で無表情に乱を眺めていたリリシアであったが、小歌の言葉に少し気をよくしたのかほんの少し顔が柔らかくなった。

 一言も喋らないからまさに人形のような奴かと思われがちだが、リリシアの表情はまさに万の言葉を語る。

「それで、リリシアちゃんはこれからどうするの? 一度小夜子さんの所に戻る?」

 小歌の問いにリリシアは静かに首を振った。

 次いで、乱が問いかける。

「ならば、クロートを持つあの少女を探すのか。ラケシスを持つお前が次元の崩壊の危険を承知でなお、側で共に戦っていたあの黒髪の少女を」

 リリシアは静かに首を縦に振った。

 そして、別れの挨拶のつもりなのか乱と小歌を一瞥すると踵を返して出口へ歩き出した。

「待てよ、リリシア」

 リリシアに投げ飛ばされたダメージを残しつつも乱は一気に起き上がり、小さなリリシアの背中に問いかけた。

「あの黒髪の少女は、もうこの次元には居ない。

 サクラ……先の戦いで鉄鬼兵をつれて出現した桜色の女があの黒髪の少女をあいつの次元に連れて行った、クロートも含めてな。

 それでも、リリシア、お前は行くというのか?」

 リリシアは立ち止まり、振り返った。

 乱を見つめ返すその凛々しき青色の瞳は、何よりも雄弁にリリシアの想いを言い表していた。

 『愚か者が。何を下らぬ事を言っている』と瞳が語っていた。

 そして、迷いのない背中が再び前に進み出し、そのすぐ後を闇騎士が追う。

「リリシア。私も行く」

 身長差が大きいためリリシアにはすぐに追い付いた。

 隣に並び共に歩き出す乱にリリシアは迷惑だと睨み付けてくるが、闇騎士は一向に気にしない。

「私はまだお前からラケシスを奪うことを諦めた訳じゃない。

 だが、私もあいつに会うためにサクラのいる次元に行かねばならない。

 私とお前は目的は違うが、目的を達成しようとする手段は一緒である。なら、互いに利用しあわない理由はないだろう」

 ポケットに両手を入れ、乱はリリシアの隣を歩く。

 何も語らないであろうが、どんなに煙たがられても乱はリリシアの後を付いていくつもりだった。

 そして、もう1人、彼もまた違う理由で青人形と闇騎士を追ってきた。

「待ってよ。二人とも、小歌も一緒に行くから~~」

 少し小走りでゴスロリ姿の小歌がリリシアと乱に追い付いてきた。

「小歌。お前はサクラの居る次元に行く理由はないだろう。なのに、何故ついてくる?」

「確かに、小歌は乱さんのような理由はない。

 でも、乱さんはライナさんが追っていた次元犯罪者。そして、反攻したとは言え、リリシアちゃんは元・ライナさんのパートナー。

 二人の側にいれば小歌がライナさんと再会する確立ってぐ~と上がると思うの。だから、小歌も二人が行く先に何処までもついていくよ」

 小歌は迷い無く言い切り、リリシアと乱に肩を並べて歩き出した。


 白歌姫と青人形と闇騎士。


 奇妙な三人組はそれぞれの想いを胸に行動を共にする。

 一度リリシアは立ち止まった。

 つられて乱と小歌も立ち止まり、どうしたのかとリリシアを見下ろしてくる。

 リリシアはそんな二人を『勝手にしろ』とばかりに睨み付けると白と黒の魔法使いはそろって首を縦に振るのだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



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