3-5:お気を付けください
3-5:お気を付けください
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『殲滅』
相棒の刀身に緑の文字が刻まれた。
月夜を背にして、剣士は薄く笑った。
「行くよ、津樹丸」
そう言うと、剣士は駆けた。
目標は、剣士が、いや剣士の一族が代々殲滅してきた闇の眷属、『闇法師』。
そのまるで、人の影が立体化したかのような敵は、今宵も人を襲っていた。
「っは」
剣が一閃。
闇法師が反応するよりも前に、まずは一体を斬り殺す。
迷いのない太刀筋は、流れるように次の獲物を斬る。
仄かに緑の光を纏う剣―津樹丸―を振るい、剣士は次々と闇法師を斬っていく。
闇法師を斬ることは、普通の刀では出来ない。
戦国の時代より月島の一族に受け継がれてきたこの津樹丸でなくては、奴らを斬れない。
剣士が剣舞を止めたとき、既に残った闇法師は三体だけだった。
半数以上の闇法師が既に塵となって消えている。
闇法師には知識がある。
彼らはこの剣士が自分たちの力で倒せる相手ではないと悟った。
生き残るのは逃げることも必要なのだ。
彼らの行動は早かった。
三体は高く跳躍して一気に戦線を離脱する。
「逃がすわけ無いよ」
剣士は一度、美しい月夜の中にある三つの黒い点の位置を確かめた。
「津樹丸、準備は大丈夫?」
『万全』
「じゃ、行くよ」
そう言うと、剣士は津樹丸を一度鞘の中に戻す。
幼少の頃からずっと、この津樹丸と一緒に修行を積んできた。
集中することも力を溜めることももはや、剣士とその相棒には必要ない。
呼吸を一つ。
戦士は吼え、剣は刻んだ。
「双花両斬!」
『翠式連舞』
剣士は鞘から緑に輝く津樹丸を居合い抜く。
緑の閃光が月夜に舞い、三つの闇を一刀両断し、無へと導いた。
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「MSデバイサー……。どうして……」
突如として戦場へ現れ、鬼神のごとき強さで人型クレデターを斬り殺した謎の剣士。
その手に握りしめられている剣は間違えなく、魔法を使うための触媒、MSデバイサーだった。
ティーカが持ってきたMSデバイサーとは全く違うそれを扱う緑剣士。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
この緑剣士こそ、二人目の魔法使い。
その名を月島玉露という。
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