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23-2:黒き闇の中で

23-2:黒き闇の中で


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 乱は力尽きて床に倒れ込んだ。

 荒い息を肩で繰り返しながら、薄汚れた天井を見つめる。

 ラケシスを狙い攻めてきたクレデターは300体。

 それだけの数を相手にして、かつ、使ったプロミス・オブ・ASの数は三枚だけである。

「流石に、少々辛いな」

 左足はクレデターに切り裂かれて出血している。

 早く止めなくてはと思うモノの、戦いで憔悴した体は思うように動いてはくれない。

 ゆっくりと深呼吸をして酸素を体内に潤滑させる。

「まるでムショの中にいるかのようにまずい空気だ。なあ、サクラ」

 ここには居ない彼女の名を呟くことで自分の心を奮い起こさせ、体を無理矢理起こす。

 生憎なことにこの廃工場に救急道具などあるはずもない。乱は上着の左袖を引き裂くと、応急処置にもならないが傷跡に巻き付け一応の止血処理を行う。

「さあ、次が来る前にラケシスを…………。と思ったが、ここに来て真打ちの登場か。

 まったく、煙草の一本でも吸う時間さえ、与えてはくれないのかよ。なあ?」

 廃工場の中でも、さらに光の届かない闇に向かって乱が叫ぶ。

 答えは返ってこない。代わりに金属が床を踏みならす音だけが返ってくる。

 黒き闇のなかで、響く音はただそれだけだったが、やがてその音も止まった。

「今度は悪魔か。悪いがラケシスを絶対に渡すわけにはいかないんでね」

 薄闇色の衣を纏い、武器として円月刀を持つ悪魔に乱は宣言するが、敵は何の反応も示さず、ゆっくりと円月刀を構える。

 そして、乱も闇色のカードをゆっくりと悪魔に向ける。

 乱と悪魔の距離は10m以上離れている。

 これは円月刀という武器を持つ敵の射程距離ではないというのに、相手はそれ以上動こうとはしない。

 そのことを不審に思った瞬間、悪魔が円月刀を振り下ろした。

「!?」


 闇のカードが両断された。


 射程距離外から振り下ろされた円月刀は、あろうことか次元を飛び越えプロミス・オブ・ASを切り裂いたのだ。

 刹那で敵の特殊能力を理解した乱はすぐさま後ろへ飛び退く、その刹那の後、乱の首があった場所を円月刀の刃が通り抜けた。

 敵はある一定範囲内なら何処にでも円月刀を出現させて標的を切り裂くことが出来るようだ。

 一定範囲と制限があると判断するのは、悪魔が乱の前に現れたからだ。

 この能力があれば気づかずに乱を暗殺する事も出来たはずなのに、それを出来なかったのは能力に制限がある故だろう。

 だからと言って、乱の戦況が悪いのは変わりないのだが。


 そして、敵の目的は本来乱ではないのだ。


「っち」

 三度、円月刀が次元を飛び越え出現した。

 しかしそれは乱の前でない、今だ眠り姫となっているリリシアの真上である。

 敵はリリシアを両断することで無理矢理ラケシスを彼女から取り出す計画のようだ。

 阻止しようと次のプロミス・オブ・ASを取り出すが、間に合わない。


 鎌が振り下ろされ、

 雪色の音色が鳴り響いた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



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