22-2:取り戻す想い
22-2:取り戻す想い
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鉄鬼兵の一斉攻撃など、流誠にはもう見えていなかった。
彼の視界に入っているのはただ1人。
彼の前に浮かんでいる紫の羽根を持つ妖精だった。
「ティーカ!!」
流誠の叫びに、ティーカは逆に顔を俯かせた。
彼を騙し続けていた自分が果たしてどんな顔をして、自分を守り続けていた騎士に会えば良いのか分からないのだ。
「ティーカ」
流誠の声が、今はティーカにとっては心を切り裂く刃となる。
サクラは『やりたいことやらないと駄目だよ』などと言っていたが、今のティーカは出来ることなら流誠の前から逃げ出したかった。
「ティーカ・フィルポーズ。今度は、逃がさぬぞ、そしてお主とサクラ・アリスのたくらみ、全て吐いてもらうぞ」
流誠ではない別の声がした。
この声もティーカはよく知っている。朱髪の次元監視者、来名秋生だ。
流誠と顔を合わせたくない。
その一心で、まるで逃げるように秋生の声がした方に視線を向ける。
「え?」
そして、絶句した。
何故なら、そこにはティーカを秋生から守るように流誠が立っていたからだ。
まるでそこにいるのが当たり前であるかのように、その背中に迷いはなく凛々しくさえ思えた。
「あんた何しているのよ。あんた、まさかまだあたしを守る騎士だとか言うつもりじゃ無いわよね。あたしにはあんたに守って貰える資格なんてこれっぽちもない。
だって、あたしはあんたを騙し続けてきた。あんたをただ利用してきただけなのよ」
「そうだ、久我流誠。お主の背中にいる妖精を守るいわれなどお主にはもう、無いはずだ。そこを退け。さもなくばお主も、この次元を壊す罪人の仲間入りだぞ」
ティーカの声も、秋生の声も流誠の心を揺らすことは無かった。
既にここに来た時点で彼の心は決まっていた。
もう迷いはない。
「ねえ、ティーカ。ボクは昔の恋人に言われてしまったよ。ボクは誰かを守ってなければ駄目な人間らしい。
だから、ボクがキミを守りたいのは、キミのためであり、そして半分はボク自身のためなんだよ」
「でも、あたしは………」
「ボクはキミを守る騎士だ。
ティーカがどんな罪を犯そうとも、どんな過ちにその手を染めようとも、どんな苦しみの渦に巻き込まれようとも、守り抜く。
ボクはティーカが正しいと思ったから守りたいんじゃない。ティーカの笑顔が好きだから、守りたいと思っているんだ」
それが紫騎士の想いであり、誓いだ。
何処までも真っ直ぐな言葉と思いに、ティーカはいつの間にか自分の枷が無くなっていることに気づき、知らずに笑顔を浮かべていた。
「言うじゃないのよ、流誠。そこまで言うのなら、何処までもあたしを守り続けない。お願い。何時までもこのあたしを守り続けて」
「ああ、約束するよ。ボクはティーカを守る騎士。何時でも、何処でも、ティーカの笑顔を守り続けて見せる」
『Wake Up Purple knight』
「何?」
秋生の左胸のポケットから紫の光が漏れる。
その光をティーカも流誠もとてもよく知っていた。
『I am Purple knight』
紫のカードに呪文が自動的に刻まれる。
秋生の左胸にあるのは紫騎士のMSデバイサー『プロミス・オブ・スマイル』だった。
万が一に備え、武器は多い方が良いと考えていた次元監視者の読みは今、裏目に出る。
『Battle for her smail』
左胸のポケットが破れ、紫のカードが本来の持ち主の掌に戻っていく。
MSデバイサーを自動起動させるほど、紫騎士の想いは強いと言うのだろうか。
「また、よろしく頼むよ。プロミス・オブ・スマイル」
流誠の呼びかけに紫のMSデバイサーはその輝きを持って答えた。
一人目の魔法使い、紫騎士、久我流誠は今ここに完全復活した。
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